第410話 蒸し暑さをなんとかしてみよう
チャチャさんと別れ、砂漠だが砂浜だか区切りのない道とも思えない通路を半刻程歩いていた。後ろを振り返ると、村やゲートは影すらも見えななかった。太陽の日照りと砂漠からくる熱風で三人とも、限界が近く不満が露骨に表れてきた。
「まだ、そんなに立ってないのに、
もう、厚くて限界だわ」
「せ、せ、せ、せっしゃは……」
僕とナナさんよりも多く着込んでいるエドワードは、足元から汗が流れ落ちてきており、我慢強い彼でも、限界はとうに超えてるようで声すらだせずにいた。
「ですね」
「ヒビキ君なんとか、なんないの?」
「判りませんが、僕も辛いんで、
なんとか、できるかやってみます」
僕は、頭上の一メートル上に雲をイメージすると魔法を唱えた。
「雨雲」
雲は雨雲に変わり、日差しを遮ると三人の上に小さな雨が降ってきた。日差しを遮られると、少しだけ涼しい感じがしたが、雨が降ったことで、より涼しくなっていった。のもほんのつかの間だった。砂に落ちた雨は一瞬で水蒸気を発生させ、下から来る熱気で返って服にまとわりついてきて暑苦しさへと変わっていき、更に、濡れたことで、足を取られ歩きづらくなった。
「ちょっと、ヒビキ君、
かえって悪化してるわよ。
もう、どうにかしてよ!」
「た・の・むでござる……」
「は、はい!」
僕は、更に雨雲を冷気で囲むイメージをすると、振ってくる雨は、凍るほどつめたい雨に変わっていき、熱気をおびた水蒸気は冷気を帯びた水蒸気へと変わって行った。
「さうが、ヒビキ君ね、
これで歩きやすくなったわ」
「流石でござる。
やっぱり、頼れるものはヒビキ殿でござるな」
二人が喜んでいられたのも、ほんの数分だけだった。一気に温度が冷え込み、体中が冷気でがたがたと震え始めた。
「さ、寒すぎだわ、
ヒビキ君、もっと暖かく、な、ならないかしら」
「寒くて、あるけないでござる……」
僕は、魔法のイメージやめ、霧散させると、また、魔法を唱えるまえの暑さに変わって行った。
「熱いわね、ほんとに」
「まったく、ヒビキ殿は、極端でござる
熱くしたり、寒くしたりと」
まだ、悪態がつける分、先ほどよりもましになったのかもしれなかったが、この後、二回ほど同じことを繰り返しながら、飽くなき地獄の砂漠道を進んでいかねばならなかった。そんなおり、遠くのほうに、二つの影が見えたことで、事態に変化が現れることになった。




