第406話 最上の時間を味わってみよう
ゲリィさんが、酒瓶が刺さっている大きな桶を軽々と持ちながら、僕たちを、一番奥にある脱衣所に連れて行った。
「二つ、洗い場があるから、奥でも手前でも、好きなほうを使ってくれ
おれは、先に行っているからな」
ゲリィさんは、しゃべりながら片手で器用に服を脱ぐと、洗い場を通り過ぎ湯が続いている奥のほうに屈みながら、ずんずんと進んでいった。
「さぁ、エドも服を脱いで」
ナナさんが介抱しながら、エドワードを脱がしている中、僕も、さっと脱いで洗い場に向けて歩みだした。僕一人かと思ったのだが、チャチャさんも着替えやすいのかタオル一枚で真後ろに付いて来ていた。
「今日、二回目ですね♪
背中流してあげますよ」
もう、一回洗ってもらってるから、いらないかなぁと思いながらも、美女に洗ってもらえる機会なんでないかもしれないと考えなおした。
「ありがとう
お願いする」
僕は、前を洗いながら、後ろを優しくタオルで洗ってもらうと、後ろから、声が聞こえた。
「ふぁぇえ、
ここは、どこでござるか」
「ここは、露天よ、ゲリィさんとこの」
「また、お風呂でござるか。
ふやけるでござる、ふぁぁあ」
「奥にお酒がまってるわよ、
さぁ、ついてらっしゃい」
「了解でござる!」
僕の横をさぁっと歩いて進んでいくと、チャチャさんに負けず劣らずの見事なボディのナナさんは、一糸もまとわずに、歩いて行った。
「ナナさんは、私と違って、お腹周りが引き締まってて、スタイルがいいですね」
「そうなの?
そこまではみてなかったなぁ」
危うく、そうだねと言いそうになったが、うまく返せたと思っていたのだが、
「そうですか?
しっかりと見えなくなるまで、みてましたよね?」
「そ、そんなことないけどなぁ」
どうやら、視線だけではなく、顔をナナさんが向かった方向についていたようだ。
すべて酒が悪いんだい!
この後、チャチャさんの背中も洗い終わり、二人仲良く、鍾乳洞の大浴場を抜け、みんながいるであろう川がみえるといわれていた露天に向かった。
暗闇をぬけ、外にでると、既に空き瓶がいくつも転がっていた。近くで見つけるたび、チャチャさんが、端に片していった。
「ちょっと、三人とも、暗がりに瓶を置いとくなんてあぶないじゃないですか!」
「すまん、すまん」
ゲリィさんの真上には、遮るものが何もなくきれいな月が出ていた。鍾乳洞の手前にある竹林は、さわやかな風がゆらりと吹くと、ひらひらと靡いていた。正面にある、川の先には、小さな滝が小さな水しぶきが跳ね上げ、月明かりで、川魚がゆらりゆらりと気持ちよさそうに泳いでいた。
「いいところですね、
風情があって」
ゲリィさんは、きんきんに冷えたエールを満足げに飲み干すと
「だろう。
この村でも、一番だと思ってるぞ」
「そうねぇ、
いろいろまわったけど、
プライベートって考えると、そうかもね♪
私としては、最後にいった海がみえる温泉もよかったけど」
「そうでござるか。
拙者は、ナナ殿と一緒であれば、どこでも最高でござる」
「お前は、まったく風情がない」
「そうですよ、
私もヒビキさんと一緒であれば、どこでもいいです♪」
「そうかなぁ、
僕はここが一番だとおもったけど」
「さすが、ヒビキくんだな
よくわかっってる」
みんながいろいろな思いを描きながら、最高の景色のなか、まったりと最上の時間が流れていった。




