第389話 ゲリィに会ってみよう
「あっちです」
チャチャさんが指さした先は、イノさんたちと別れた山の奥側だった。
街並みで入り組んだ山のほうに向かうため、町の中央を横断する必要が有りそうだったが、大通りを抜けるのをやめ、遠回りに迂回したたため、時間がかかった。
小さい集落であるにも関わらず、一刻もかかって、ようやく山奥にある小さな一軒屋の鍛冶場までやってこれた。
「ここに、ドワーフがいるでござるな」
「エドワードの知り合いなの?」
「可能性は、あるでござる。
ひと……」
エドワードが話している傍にも、チャチャさんはかまわず入り口に到着すると扉を開いた。
「ゲリィさん、遊びにきましたよ♪」
「おうよ。
いらっしゃい」
オオストラトとよく似ているがっしりとした体形だが、禿げでりっぱな顎髭のおっさんが、火事場からでてきた。
「だれかと思ったら、
オオストあにぃの息子のエドじゃねぇえか。
あいかわらず、珍妙な服装してやがんなぁ」
「おじじ殿、お久しぶりでござる」
「しゃべり方まで、前と一緒か。
早く、まっとうな仕事をしろってんだ」
僕は、後ろから話加わると、
「これでも、姫様の護衛をしてるんですよ」
「ドワーフの仕事っていったら、鍛冶職人だ。
戦士でも、兵隊でもねぇ」
「それは、偏見でござる」
「あぁ!!
じゃ、鍛冶をやってねえのか?」
「や、やってるでござる……」
「ほら、やっぱり、やってるじゃねえか。
ドワーフが鍛冶から離れられるわけないだろぉ」
僕は、エドワードから作ってもらった上防具を脱いで見せると
「これをエドワードに作ってもらったんです」
「ほう、なかなかおもしろいな。
人間の坊主でもきれるように軽くか。
お前にしては、よく考えられてるな。
だが、まだまだだな」
ナナさんが、怒りを抑えながら冷静に話に参加した。
「じゃ、エドワードよりも、凄いものが作れるっていうわけ?」
「当然だ!
だが、ここは、向こうと違って、いい素材があんまり出回らないんだ。
結構、いろいろなところに出歩いて探してるんだがな」
「おじじ殿、
みてござされ。
これが、ドロップしたでござる」
エドワードがザンジさんが残したアダマンタイトの原石を手渡した。かなりの重さだというのに、軽々と受け取ると、品定めを始めた。
「ほほぉ。
かなりの良質だな。
ダンジョンで掘ったアダマンタイトの鉱石群より品質がよさそうだな」
「これで、ヒビキ殿にあう片手剣をつ作れないでござるか?」
「ぼくじゃ、そんな重たいもの使えないよ」
「ふむ……
流石に人間に持てるアダマンタイト製の剣は難しいな。
薄くすれば、可能ではあるが、実践向きではないしな」
「ですよね、無理だってわかってます」
「無理とはいっとらんぞ。
兄ちゃんでも、使えるアダマンタイト製の剣を作ってやろう。
まぁ、入り口じゃ、なんだから、みんなで中にはいるといい」
僕らは、たいして広くもないであろう鍛冶小屋に、一人づつ入っていった。




