第387話 邪魔な柵は壊してしまおう
大浴場にでると、右側には大きな柵で区切られており、石で作られた浴槽には、隣の旅館の浴槽と繋がっていた。左側には、一面オーシャンビューで、前面には、流れの緩やかな幅広な川が流れていた。また、浴室に眼を移すと、大浴場とは名ばかりで、浴室は5人はいると足を延ばすほども困難な程にもかかわらず、強引に6人がはいり、外には、数人の男女が、出てくるのを待っていた。
僕は、近くの男性に話してみると
「結構、待ってますか」
「う~ん、そうだね」
「半時は、待ってるるよね」
これ以上は、入っている人を催促してるようで、聞くのがためらわされた
。
遅れて美女がやってくると、小高い形の二つの山がとても魅力的で、全てのことが許せるほど幸せな気持ちに包まれた。
「ヒビキさん、お待たせしました。
想像してるより混んでますね」
「半時ぐらいは、湯舟には浸かればいみたいだね」
「やっぱり、さっきのとこで入っておけばよかったんですよ」
確かに、こんな状況になるくらいなら、さっきの場所のほうがゆっくりできてよかった。
僕は、熟考を重ね、
「これって柵壊したら、どうなる?」
「旅館の宿の人たちから、怒られるに決まってるじゃないですか」
やっぱり、予想通りの答えが返ってくると、僕は、かまわずに
「だよね、うん……
皆さん、この柵を壊して、隣とくっつけましょう!」
周りからは、思っていた通り否定的な声が聞こえてきたが、徐々に待っていた人たちからは、賛成派が現れ、半分くらいに割れてきた。
「責任は、僕がとります。
もし、失敗したら、また作ればいいんだし、
柵が無くなったら、みんなゆったりと足を延ばして入れますよ」
最後の一言によって、反対派は、美女一人だけになり、10数人の男女が協力して、柵を破壊していった。
「ま、まずいですってヒビキさん。
ど、怒鳴り込んできますって」
泡合わしているチャチャさんを置いて、どんどんと柵は壊され、行き来ができるくらいになっていった。
バキ、バキッ
最後に川側で、支えていたところが壊れてしまえばすべての柵が壊れ自由になるところで、二つの旅館の主人が慌ててこちらにやってきた。
「お、お客さん、何やってるんですか!!!
あぁ、こんなにして!
弁償してもらいますからね!」
「ええ、弁償でもなんでもしましょう。
ですが、この状況をどう思ってるんですか。
浴室は小さく、入れないし、お客さんから、苦情が多数、でてるんじゃないんですか?」
「う、
そういわれると、そうですけど。
ですが、それは、仕方ないでしょ。
うちは、割り当てが小さいんですから」
「でしょう♪
だったら、隣の浴槽を使わせてもらえばいいじゃないですか」
「それは、ありがたいが……
隣のご主人に申し訳がない」
「そうです、これ以上お客を取られたら、やっていけない」
「そうですか?
これで、露天風呂から見えるオーシャンビューが戻ってくるんですから、客足も、戻ってくるチャンスに変わるんだとおもいますよ」
「そ、そうか、
そうかもしれない……」
「それに、これで、客も分散されるから、込み合いすぎるってこともなくなるでしょう」
「ぐぅ。
このままだと、悪評で客がこなくなってしまいそうだったし、しかたないか。
ロトチョさん、今後は、手を取り合って一緒にやっていきましょう」
二人の店主が、手を取り合って、厚い握手を行っていると、最後の柵は取り払われていった。
僕は、柵を壊してくれていた人たちに、素っ裸で挨拶をした。
「皆さん、お疲れ様です。
あとは、ご自由にはいってよくなりました」
「「「おぉーー!!」」」
取り払われた露天風呂は、10人以上が入っても、悠々につかれるくらい広かったが、取り払われたことで、さらに広く使えることができるようになった。
「これで、のびのびゆっくり入れるようなったわ、ありがとね♪」
僕よりも、年上の女性にお礼を言われると、少し照れてしまった。
裸だし、おたがい。
「ヒビキさん、お見事でしたね。
これで、ここも、もっと発展するかもしれません」
「そうなるといいね」
「さ、体を洗って、ゆっくり湯につかろうか」
「はい♪」
僕が、洗い場に向おうとすると、川から、一人のの女性が入ってきた。
「なんだか、隣が五月蠅いとと思ったら、
また、ヒビキくんなのね。
柵を壊すなんて、相変わらず無茶するわね♪」
「川から、こっちにくる人に言われたくないですよ。
で、エドワードは、どうしたんです、ナナさん」
「私の服をもって、更衣室からくるんじゃないかな」
体を洗いながら、しばらくすると、更衣室から、声が聞こえてきた。
「ナナ殿、ひどいでござる~。
あ、あれ、ヒビキ殿。
チャチャ殿もいたでござるか、隣で凄い音が聞こえたでござるよ」
「なんだろうね、僕もよく分からないよ。
ははは」
「ですね♪」
僕は、二人で仲良く背中をあらって貰いながら、広々となった大浴場を見ていた。




