第382話 今日の宿を探してみよう
僕は、気持ちが落ち着き、我に返ると、肩を借りていたことで、恥ずかしくて真っ赤になっていることが自分でもわかった。
「ありがとう
チャチャさん、お、おかげで落ち着きました」
「そりゃ、落ち着くわよね、美女の肩をかりればねぇ、
うふふ♪」
「なななな、ナナさん
誤解です、誤解じゃないけど、誤解です!」
「確かに、拙者もナナ殿の胸で泣いて落ち着いたでござる」
「む、胸で?
へぇ~」
僕が目を細めて疑惑の視線を送るとナナさんは、目線を逸らし慌て始めた。
「こ、コホン。
さ、他に回るとこないなら、温泉を回ってみたいわね。
いろいろあるんでしょ?」
「ええ、
いっぱいありますよ。
きっと気に入るところもあると思います♪」
「場所だけ教えてもらえれば、いいわ」
ナナさんは、チャチャさんから、いくつかの場所を教えてもらうとエドワードのくびねっこを掴んで歩き始めた。
「じゃ、ヒビキくん、夕方にさっきの露天の前でね」
こちらを見ることなく話すと、あっという間に後ろ姿が見えなくなった。
ナナさんの後姿を見ていた僕を遮るようにチャチャさんが顔を出すと。
「ヒビキさん、
このあと、どうしますか?
一緒に、温泉にはいりますか♪」
魅惑的な一言で、思わず考えずにはいと言いそうになったが、少し今夜の宿のことを決めておく必要があった。
「時間があったら、お願いします。
とりあえず、この村の宿を見てみたいのですが、
たしか、どこでも泊まり放題なんだよね?」
「ええ。どこでも、ご自由にどうぞっていっても、
判りませんよね♪
いくつか、おすすめを紹介しましょうか?」
「はい!
ぜひ、お願いします!」
「では、ですね、近間から。
ここから真下に向けて歩いていきましょう。
この近辺は、老舗の旅館が多くて、山沿いの旅館は、山からの幸を使った料理と、高台から見える村の風景や山の自然を楽しめます」
「なるほど。
前回の宿がそんな感じでした。想像がつけそうです」
チャチャさんが、言葉を聞くと、山に連なってる旅館群を無視し、別の道に外れていった。少し歩くと、今度は川の音が聞こえ始め、歩いた先には、二階建ての小さめの旅館がいくつも並んでいた。
「この辺は、川沿いにいくつも連続で建てられてます。
川の幸と山の幸の両方が、楽しめます。
温泉は、山からの源泉を引いてますので、川を見ながら、のんびり浸かることができます」
「それは、初めてかもしれません。
さきほどより、興味があるよ」
「じゃ、一緒に入りにいってみましょう♪」
ええ、ぜひと喉まで出かかったが、何とか、飲み込み、次の宿を紹介してもらうことにした。
「いいですね、
ですが、まだ、全部みてませんから、楽しみは、とっておきます。
次をお願いします」
「は~い♪」
明るく返事をすると村の中心に向けて歩き出した。徐々に人が増え、露天も全部でているどころか、据え置きでおかれていた露天よりも増えており、さらに賑わっていた。
「だいぶ、盛り上がってきましたね」
「そうですね。
ヒビキさんも、一緒にどうです?」
「ええ、少しだけ、休憩しますか」
「じゃ……先に
えっ!
いいんですか!?」
「ええ、何かおごりますっていっても、
今日は、無料でしたね。
チャチャさんのおすすめはありますか?」
「もちろんです」
彼女は、僕の右手を掴むと混雑している露天の中に一緒にはいっていった。




