第381話 イノさんたちとお別れをしよう
チャチャさんに連れられ、村の真上に向かって歩き始め、徐々に山が大きく見えてきた。
「まもなくっていうか、
この道を道なりに行くと、そのまま、魔王様がいらっしゃるといわれる館まで到着できます」
「なるほど。
シュシュさんも、言ったことがあるの?」
「はい、何度か遊びに行ってます。
とても、温厚な魔王様で、なんでも話を聞いてくれます」
「へぇ~、魔王っぽくないね」
「魔王っぽくってのは、判りませんが、
この大陸の魔王様は、とてもいい魔王様です」
ジルのように、暗躍するわけでもなければ、モーリスさんのように民主主義で統治するわけでもなければ、バート師匠の用によっぱらいなわけでもないか。
って、それぞれだなぁ。魔王っぽくってひとくくりには、できなさそうだ。
でも、前に聞いていた清流教会の大司教の話と食い違った気がした。
「ここの魔王は、下の大陸 エスサハカ大陸に攻め入ったんじゃないの?」
「そんなこと、絶対ありえません。
魔王様は、虫一匹倒さないといわれてます。
聞き間違いじゃありませんか」
「う~ん、伝承だからなぁ。
100年ぐらい前だから、魔王が違うとかは、ないのかなぁ」
「100年であれば、今の魔王様です。
20年前に、前魔王様、魔王様の娘と婿様がお亡くなりになり、引退していた現魔王がふたたび統治しております。
ていっても、何も統治らしいことは、しないって昔から言われてますよ」
「へぇ~。
そうなんだ」
彼女の口ぶりから、言ってることは正しそうに思えた。ということは、どうやら、ねじれた事実がどこかにありそうだが、彼女からは、これ以上の情報は出てこなさそうだった。
話に夢中になっていると、住宅街を抜け、人通りは無くなり、一本道を歩いていた。
「この道のさきですよ♪」
チャチャさんが、手を刺した先には、三匹が見えるような形で、僕らの前に立ちふさがった。
「ワカッタノダ」
「@ここまでだね@」
「おせになっただお」
三匹が、頭をさげ、お別れの挨拶をしていった。
僕らが驚いている中、ナナさんが口を開いた。
「まだ、いいじゃない、明日まで、一緒にいましょうよ」
「そうでござる」
二人の説得も、彼らの決意は決まっていたようで、首を縦には振らなかった。
「@あしただと、けっしんがゆらぐかもしれないから、ここでおわかれするね@
「ごめんだお」
僕は、泣きたくなりそうな気持ちを抑え、
「わかったよ。
こんど、合うときは、みんながそれぞれの体に戻ってるね」
「ソウダ。
デハ、オワカレダ、サラバ!」
「@またね@」
「おわかれだお」
最後まで、ギノさんが尻尾でお別れをしていたが、あっという間に姿が見えなくなった。
「いきなりだったわね」
「そうでござるな。
急に寂しくなったでござる」
「しかたないよ、それが望みで、目的だったんだし、
彼らが無事に達成できるように祈ろうよ」
僕は、涙が落ちるのを我慢しながら、精一杯明るい声で二人を鼓舞したが、それをみたチャチャさんが、
「我慢しないでいいんですよ、
別れは寂しいものですから」
の声をきくと、大粒の涙が頬を伝って流れていた。チャチャさんが、頭に手を翳して抱きしめてくれると、そのまま肩を借りて気持ちが落ち着くまで、頭を撫でられていた。




