第378話 露天に買い食いにいってみよう
僕らは、店の中でなんとか安く値段交渉をがんばってるギルド長がでてくるのを待っていた。
「他には、何を買おうかな?」
「その辺にしてあげたら?」
「そうでござるか?」
僕とエドワードはこれまでの散財で気分が乗ってきており、まだまだ買い物を続けたかったが、周りには、それほど大きな店がなく、後は小さな道具屋ぐらいしか大通りには見えなかった。
そんな中、そういえば、食べるものを何も持っていないことに気が付いた。
「そうだ、食べ物屋は、どうです?」
「いいわね。
流石だわ♪
さっそく、いきましょう♪」
ナナさんは、あんなに可哀そうな顔で見てたというのに、今は、喜々としていた。
対照的に、交渉に失敗したのか、がっくりと膝を落としたギルド長が店から出て来た。
「どうしてこんなことになったんじゃ……
変な欲を出さなければ、よかった……」
大きな独り言を無視したが、ナナさんはギルド長の肘に、自分の肘を絡ませると
「さ、次は、おいしいものを買いに行きましょう♪」
「もう、どうにでもなれじゃ。
食べ物は、村の中央じゃ。こっちじゃ!!」
完全に吹っ切れて、元気になったギルド長を連れて、湯煙舞う露天があるであろう村の中央に向かって歩き出した。少し進んだだけで、いたるところで湯煙がモクモクとしてきて、温泉街にきたことが実感できた。
だが、普段であれば賑わっているであろう村の中央は、品物がないのか、客がいないために辞めてるのか、店はほぼ閉まっており、2店しかやってなかった。
「残念じゃなぁ♪
まぁ、好きなものを買って食ってほしいのじゃ」
ナナさんは、ギルド長と一緒に露天にでてる品物を見たが、蒸かしたじゃがいも、温泉饅頭に、温泉卵しかなかった。
「まぁ、いいわ、各3っつ頂戴♪」
「まいど。いらっしゃい」
露天のおばさんは、久しぶりのお客だったのか嬉し気に、注文したものを包むとナナさんに手渡した。
ナナさんは、みんなに手渡すと熱々だったため、持ち続けるのが困難だった。
僕は、それほど熱くないだしに入った温泉卵を一口で食べると、うま味と塩味のバランスがちょうどよく、黄身の甘みも加わり美味しかった。
僕は、要らなくなった器を露天のおばさんにわたし、
「温泉卵美味しいですね」
「うんうん、まだあるよ
どんどん、食べて♪」
「どうしようかな?
いつも、3種類なんですか?」
「いつもは、ここの港でとれた魚介や、肉まんやらいっぱいあるんだけどね、
仕入れが不安で、交代で店をだすことにしてるんだよ」
「あ、でも、今日、ギルドに隣町から物資を運んできましたし、
明日には、魔王のお孫さんが、反対側の道も開通できるようにするみたいですから、不安は解消できますよ」
「へぇ~、ほんとうかい!?
神の使いがくるって話は、聞いてたけど、物資も運ばれてきたんだね。
ねぇ、ザジさん、ほんとなの?」
「ほ、ほんとじゃ、
あ、あ、明日には、配れるじゃろ」
「ありがたいわね。
じゃ、明日には、全開店できるわね」
「明日なんですね。
他の町や村では、当日にくばってましたけど、どうにかならないのかな。
ちょっと、シルバ様とギルドでお話させてもらえませんか?」
ギルド長は、絶望の顔になると直ぐに訂正し始めた。
「なななななん、
今準備してるから、きょ、きょ
夕方前には、み、み、みんなに、いきわたるのじゃ」
「ですよね、
そうだと思ってましたよ」
「ほんとかい♪
じゃ、みんなに連絡してくるよ。
今、ここに、ある商品、食べられるように準備してるから、
ゆっくりと、じゃがいもでも食べといてくれ」
そういうと、おばさんは、バックから、幾つもの食材を、ほぼ空になっていた蒸かし器に、どんどんと整列していった。
「これで、準備できた、っと。
じゃ、ちょっとみといてくれ。
今、他の人たちに教えて来るから」
「な、ななんー
ま、ままっーー」
ギルド長は、今更ながら違うと言いたげだったが、みんなに言うという衝撃で膝の力が無くなって、その場に苦ざれ落ちた。だが、そんなザジさんをおいて、既に大声で小さな路地に響くように、告知されていった。
ナナさんは、温泉饅頭をぱくぱくと食べながら、
「まさかですけど、
ザジさんは、配るのを遅らせることで、買わせるのを少なくさせようだなんて、思ってませんでしたよね?」
「ば、ば、ば、ばかな!!
心が読めるのか!」
「読めるわけないでしょ」
もはや、真っ黒過ぎて僕も助けるよちがひとつもなかったが、そんな僕らの気持ちを変えるぐらいに、幾つもの露天が開かれていった。




