第377話 魔法の絨毯を買ってみよう
少し離れた先に、小さな看板と外から見える整列されたアイテム群が、ここの店主が整頓好きなのがわかった。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ♪
お客さんは、久しぶりだわ」
雑貨屋は、小さな小物から大きなものまで、ざっくばらんに置いてあったが、予想以上に几帳面な店主のためか、防具屋よりも更に見やすく品列されていた。
そんな中、ナナさんが、カウンターに近づきながら開口一番で
「なんか、ギルド長が隠してっていったものある?」
「ええ、これとこれね。
今日、一日隠してっていってたから、横に置いといたのよ
みたいなら、どうぞ♪」
「ありがとう」
一つは、きらびやかな箱で、特に大したものでは、なさそうだった。
もう一つは、手鏡であからさまに、呪われていそうないわくつきの物のようだった。
「この箱は?」
「これは、エルフの都でみつかった箱らしいわ。
宝石箱ね、綺麗でしょ」
確かに、綺麗な彫刻と宝石がちりばめられており、少しお値段が張るのだとわかった。
「問題は、こっちですね」
美人の店主が、苦笑いを浮かべながら返答してくれあ。
「おすすめはしないわ。
エルフ産らしいけど、呪われてるでしょうね。
それに、真実を映す鏡ですって。
ユニークスキルもついてるし、お客様だけど、やめといたほうがいいと思うわ」
「そうよ、やめときなさい、
りぃちゃんじゃあるまいし!」
僕は、一考し他の人に手わたると危険と思い買い取ることにした。
「両方買い取ります。
お金は……あ、あ、きましたね。
あの人が払います」
声を聞いた瞬間に、肩をがっくりと落とし、入るのをためらったザジさん諦めながら、店に入ってきた。
「ザジ様。
さっき、このギルドの方が、二つ買われましたが、よろしいでしょうか?」
あからさまに、だめだと口ずさんでいたが、
「ああ、いいんですじゃ。
い、いくらですじゃ」
「二つで、金貨2枚です」
「う、うぅ、に、二枚……」
更にがっくりと肩をおとしたギルド長は、支払いがあるだろうから、置いといて、正面にある骨董品屋に向かって店を出ることにした。
外から見た窓からも、小物やはまるで逆に、中は品物で溢れ、入るのも大変そうだった。
カラン。
「ごめん下さい」
「…いらっしゃい」
店の奥から、おじいさんの小さい声が聞こえ、何とか聞き取れるレベルだった。
「ここに、お宝があるってきいたんですが……」
「ああ、どっかにあるな。
ギルド長にも、言われたが、めんどうだから、そのままにしてるよ。
好きに見てくれ」
店の中に入ると、いくつもの品物が置かれて、全て誇りがかぶっており、どれが高いのか、まったくわからなかった。
「ナナさん、エドワード、判る?」
「私は、ものに興味ないから無理だわ」
「武器や防具なら、判るでござるが……」
う~む、呪いならリイナがと思いながら、雑念を捨て、自分が気になるものを探すことにした。
狭い店内ではあったが、上下左右、床にまでものが、積み上げられており、あからさまにゴミと思われるものまで、雑に置かれていた。
いろいろ見て回ったが、壁の脇に転がっていた空瓶に、目線を外しても、また、目に入ってきた。
僕は、それをひとつ持つと埃で手が汚れた。
「これなんですけど……」
「また、古臭いものをもってきたね。
それは、結構昔にエルフが持ってきた魔法のアイテムだ。
なんだってけかな・・・・」
彼は、過去を思い出そうとしていたが、いくら待っても答えが出てきそうになかった。
僕は、これ以上は意味がないと思い、買うことに決めた。
「これください。
会計は、ギルド長が払いますんで」
「ああ、わかったよ。
そういや、君たちか、あの……ふぅ~ん。
なるほど、なるほど!」
彼は、全てを察したようで、僕らとは反対側をみると、大きな独り言をし始めた。
「これは、一人事だが、その入り口の大きなじゅうたんがこの町で一番高い品物だ」
店主は、独り言を言い終わると、僕が持ってきた小瓶の埃を息で吹き飛ばし、空瓶をそのまま手渡した。
僕が空瓶で受け取ってると、隣にいたエドワードが口を開いた。
「店主、これも貰うでござる」
エドワードが指刺したものは、店主が高いと言っているものずばりだった。
「流石、お目が高いですね。
これは、国宝といってもおかしくないぐらいの品ですよ!!!」
ナナさんが、こっそりと僕に近寄って耳打ちすると、
「ヒビキくん、ほんとに、そんな高いものいいの?」
「いいんじゃないんですか?
町を助けたんだし、ナナさんも、結構危ない目にあったみたいですしね。
最後、退治したのはエドワードなんでしょ。
当然じゃないかな」
「そうでござる。
昨日は、大変だったでござる」
「き、きのうって、何?
な、なんのことか、さっぱりわからないわ。
そ、そういうなら、後は、任せたわね」
ナナさんは急ぎ早に言い終えると、店を後にしたが、入れ違えで肩の落としすぎで腰が曲がり切ったギルド長がはいってきた。
たぶん、この後の会話が嫌で、逃げたんだと思う。
ギルド長は、僕らを通り過ぎ、初老に近い店主に向かって話始めた。
「はぁはぁ、
こ、この店では、買われてませんじゃろ、
な、な、ベベット?」
僕は、後ろから、彼に話しかけると、
「二つだけですよ。
このやっすいつぼか何かよくわからないものと……」
「うんうん、
それはいい、それは。
あと、いっこも安いやつじゃろ?」
「ああ、そのホコリ被った絨毯だよ。
ギルド長が欲しい欲しいって言ってたやつだ、はは」
「ば、ば、ば、ば、ば、ばかな……」
泡を吹いて卒倒したので、絨毯をエドワードがバックにしまい、店主に話を切り上げて店から、退散することにした。




