第374話 話をよく聞いてみよう
誤記修正
僕の毒は、吐き出すところがなかったが、ナナさんの毒は、溜まることがなかった。
「ヒビキ君、訂正しないの?
すればいいのに」
「そうでござるよ。正しいことを言ったほうがいいでござるよ」
小声で言ってくる二人に、だったら君らが言えば、良いじゃないかと言いたかったが、
「何か、こまりごとですかな?」
「いえ、なんでもありません。
ご丁寧な扱いで、感謝しております」
と、笑顔で返答するしかなかった。
「ぷ~、ヒビキ君ったら、すましちゃって。
後で、思い出して、酒の肴にしよっと♪」
「そうでござるな」
うひひと二人で笑ってあう姿に、内心いらつきながらも、ギルド長に付いて行くと、直ぐに、大きな平屋の建物が見えて来た。
「ここは、小さいギルドじゃで、町の管理も並行でやっておりますのじゃ。
どうぞ、皆様方、おはいりください」
中は、だだっ広い空間があり、中には、長い机がいくつも置かれ、それに合わせて、長い椅子が挟んで置いてあるだけだった。
僕は、近間のテーブルに誘導されると、預かってきた物資が入ったバッグを待っていた職員に引き渡した。
「こちらですね。
私でお預かりします」
僕と同年齢くらいの若い女性が大事そうに抱えると、近づいてきた。
別れ際に僕に聞こえるくらいの小さな声で、
「……ギルド長を懲らしめてください……」
彼女が呟くと、奥に職員の半分を連れて、下がっていった。下がって行った先のドアから見える小部屋には、絢爛豪華な品物が所狭しと置かれている様だった。
だが、その様子を見せまいと遮るように、部屋と僕の間にギルド長が来ると、見えない位置に座るように促された。長居する気はなかったのだが、若い女性のこともあり、僕は、座って話を聞くことにした。
全員が座るのを確認すると、自分も座り軽く頭をさげた。
「お役目ご苦労さまでしたじゃ」
「いえいえ、次の町分があるんですよね?」
「既に、町からここに向かって、物資が運ばれてくる予定ですじゃ」
「どういうことですか?」
「ルンガポ村から、ジニョーロ町までの道のりは、魔王の孫娘のシルキィ様と
エルフの女王候補でおられたアメリア様が、討伐してくださいましたのじゃ。
今朝がたジニョーロの町をでて、この村 バンブーオに向けて、
出発されたって聞いておりますので、明日にはこちらに到着できるとのことですじゃ。
ありがたいことですじゃ」
縁起っぽく、天を仰ぎ拝んでいた。
僕ら以外にも、討伐できるほどの冒険者がいたんだな、
世の中は、広いんだから当然だよね。
「では、入れ違えにならないように、待ってたほうがいいんでしょうか?」
「あ、いや。
まぁ、悪いんじゃが……
今日は、接待させてもうのじゃが、
明日からは、普通の対応になると思っておいてほしいのじゃ」
「ヒビキ君、困らせたら、悪いじゃない。
長居してたかろうだなんて、うふ♪」
「そうでござるぞ。
ヒビキ殿は悪逆非道でざるな」
テーブルの下で、握りこぶしに力を込めて怒りを収めると
「じゃ、明日の朝、合流地点の町に向かおうか」
二人に話したのだが、それよりも先にギルド長が話してきた。
「それは、それは♪
きょ、今日は、この町の宿、すべてご自由にお使いくだされ。
すべて、自由に使えるようにしろとシルバ様から、請け負っておりますじゃ」
だったら、長くいられても困らないきがする。
さっきのこともあるし、他に何か意図があるんじゃないのかな?
僕は、顎に握りこぶしを当てて、今一度ギルド長の言葉を考えてみると、一つの疑念が浮かび上がり確認することにした。
「それは、すごいですね!
じゃ、出発は、明後日にします」
「え、いや、あ……」
あからさまに動揺していることから察するに、やっぱり想像どおり、意図的に隠してる気がした。
そんな考えの僕は、むずむずといたずら心が騒ぐと、さらなる追求を行うことにした。
「シルバ様は、自由に使えるようにしていいって話ですよね?」
「そ、そうですじゃ」
「宿は、今日は、自由に選べるんですよね?」
「そうですじゃ」
「明日は、自由じゃないですけど、選べるんですよね?」
「な、な、な、なぜにぃ、わかったのじゃ。
そうですじゃ……」
「日にちの期限は、されてないですよね?
いる間、ギルド持ちであってますよね?」
「ひぃ、やっぱり、ばれてるのじゃ」
たぶん、シルバさんは、バンパイアの討伐報酬と、町の内部に入り込んでいた魔物を討伐した報酬を出せなかったのを、思慮したんだと思う。
だから、次の村であるここで、恩を返そうとしたんだと思うけど、事情をよく知らないこのギルド長は、使わせたくないって思ったんだろう。
そして、イノさんたちを神獣として扱って、こちらをいいように誘導しようとしたんじゃないんだろうか。
だったら、ありがたく使わせてもらうことにしよう。
今日は久しぶりに散財しよう、人のお金で♪




