第373話 言いたいことも言えないそんな気になってみよう
僕は、一番偉いと思われるお年寄りに声をかけると、
「すみません。
なんのことでしょうか?」
「おお、お付きの方。
神の獣様をお連れ下さるとは、あなた方も、魔王様のところへ行かれるんじゃろう?」
「神の獣とは、なんでしょう?
どういうことでうか?
私たちは、次の町へいきますが、確かに、あなた方が神の獣といっている彼らの目的は、魔王様のところですよ」
「うん?
彼らとは?
わしの目からは、一体しか見えんが……」
イノさんは、しっぽと提灯をおじいさんの前にだすと、
「@ナノだよ@」
「ギノだお」
「イノ」
三匹が、彼の前で挨拶をすると、その場にいた僕ら以外は、すべて土下座をして、拝み始めた。
「「「ありがたや、ありがたや」」」
どうやら、イノさんを何かと本気で、勘違いしてるような気がするが、彼らを放置して先に進むわけにはいかなかった。直ぐにかれら全員を立たせると一緒に村に向かって歩きだした。
「ギルドは、どこでしょう。
お願いされた物資を持って来たんですが」
「ありがとうございますだ。
ギルド職員一同、心待ちにしておりました」
そういうと、さきほどの全員が一斉に頭を下げた。
「じゃ、あなたたち、職員だったの。
気が付かなかったわ」
これまで、青のギルド職員用の服を着ていたが、今、彼らが来ているのは、綿でできた灰色の作務衣だった。
「あれは、暑いからの。
ここだと、汗だくになるんで、結構前に、作務衣にしたんじゃ」
たしかに、ここは、これまでに来たとところに比べると、格段に厚く、蒸し蒸しとしていた。
「そうだったんですが、
それは、いい考えですね」
「ありがとな
ギルドは、こっちじゃ」
おじいさんと並んで歩きながら、団体さん一行で進むと、当然、後ろにぞろぞろとギルド職員が付いてきており、変な大名行列のような感じがした。
周りから、他の村人にも跪づかれることもあり、村人にも神の獣の話が、伝わってることが分かった。
「ところで、昔から、神の獣が有名なんですか?」
「は?
昨日、シルバ様から、直接連絡があってな。
神の獣の一行がそっちにいくから、ちゃんと敬うように。
こっちじゃ、敬わなかった冒険者が3名雷に打たれて死んどるぞ!
って、脅されたのじゃ」
それ、一部改竄されてますよと言いたいところだったが、変にイノさんの話をしても、面倒と思いとどめることにした。
それにしても、言いたいことも言えないこんな旅、ストレスが溜まる一方だよ。




