第372話 一気に村に向かってみよう
僕は、頂上から、ほぼ真下に近い村を見ると、
「こっからだと、あと少し歩かないといけませんね」
「だよね、一気に駆け下りれたら、あっという間に到着できるのにね」
「そうでござるな」
三人で談笑していると、一匹の獣が背後から迫ってきていた。
「マカシトケ」
イノさんは、一人一人を抱きかかえると、村に向かって、投げ飛ばした。
「「「ぎゃ~~~~」」」
ぼくらは、想像もしていなかった浮遊感と落下する風で、大きな声で悲鳴をあげたが、このまま何もしないとあと十数秒で地べたの染みになるのが目に見えていた。
「エド、どうにかできないの?」
「任せるで、ござる。
拙者のむささ、むさささささあさ~」
必死にバックから何かを出そうとしているが、恐怖のあまりか取り出せそうになかった。
「ああ、だめそうね!
ヒビキ君、おねがい!なんとかして!!」
「むりですよぉ~、あぁああああ~」
あまりの咄嗟な出来事で、パニック状態だったが、時間は待ってくれず、あっという間に村にいる人すら判別できるぐらいの距離まで、近づいていた。
「さぁ、つかむだお」
ギノさんが、僕ら三人をひとまとめにして、巻き付くと、イノさんの背中に乗せてくれた。イノさんの背中には、大きな蝙蝠の羽が出ており、二~三回ほどバタつくと、落下速度が急に遅くなり、さらにもう一度、大きく羽ばたいた時には、地面にゆっくりと着陸していた。
「「ふぁぁあ、怖かった」」
「お、お、お、お、驚いたでござる」
流石に、肝を冷やし、ギノさんがイノさんの背中から、地面に下ろすと三人とも、腰を抜かしてへたへたとその場にうずくまった。
「はぁ、はぁ、
とりあえず生きてるわね」
「@はやかったでしょ@」
「二度とごめんでござる。
いや、三度目は、いらないでござる」
既に、一度、高台から落ちていったエドワードを、心底尊敬できると見直した。
一度も本人の意思で、落っこちてはいないけれども。
ようやく、何度かの大きな深呼吸で、落ち着きを取り戻し、辺りを見回すと、僕らは、取り囲まれるように村人が、こちらに集合して、跪いていた。
「神様のしもべだわ」
「よげんどおりじゃぁ」
「雄々しい姿だ」
彼らは、何かと勘違いしているようで、イノさんを見ては、拝んでいるようだった。




