第358話 真実を告げることが正しくないことをしろう
モンザさんも僕と同様に過去を思い出したのか、照れながらも、手はてきぱきと、貝の下処理をしていった。
「そういえば、ハン式格闘術ってことは、ハンさんから、習ったんですか?」
「ああ、この頭も師匠に合わせて、坊主にしたんだ」
そして僕は思い出したが、彼は坊主ではなかった気がした。
「でも、ハンさんは、緑色のモヒカンですよね」
「お、ヒビキくんも師匠にあってるんだね。
昔、師匠のお子さんが、怖い目にあったとき、心をとざしてね。
どうにかして、元に戻ってもらいたいと、
いろいろやった結果、あのモヒカンで笑い始めたらしくて、
それから、あの髪型にしてるんだよ」
「へぇ、そんな逸話があったんですね」
ただの変態かと思ってたけど、そんなことはなかったんだね。
僕が、話してる間に伊勢海老は、上下二つに分けられ、尻尾部分を綺麗に殻と身に分けると、乱切りに切った。上半身も食べられるところはきり、大きな皿を準備すると、生きたままのように飾られた。そのイセエビのの切り身の脇には、醤油でとかれたエビ味噌が小皿で置かれ、漬けて食べるようになっていた。
「飾り用に、野菜とかあるかい?」
「僕はないです」
「あるわよ、こんなのでいい」
いつの間にか、起きていてエビを凝視していたナナさんが、こちらに近づくと、バックから、いくつかの野菜をモンザさんに手渡した。
「ああ、ありがと。
イセエビの脇に人参とか大根とか、飾りに使わせてもらうよ」
ナナさんは、さらに近づくと、イセエビの入った皿を見ると我慢ができなかったのか涎が垂れていた。涎を舌なめずりで嘗めとると、一つを指でつまみ、エビ味噌をつけて口にほおばった。
「おいしー♪
私、エビは大好物なのよね。この味付けも今まで食べた中で、一番おいしいかも♪♪」
「え?
食べないんじゃないの?」
「大好物よ、食べないわけないじゃい。
そういや、夢で、ひどい扱いしてた気がしたけど、思い出せないわ。
まさか、変なことしてないわよね」
ナナさんは、目が座った状態で、僕らににじりよると慌てて訂正しなければならなかった。
「そんなことないよね、
両網に一番大事にいれてもってかえってきたよね、ね、モンザさん」
「うん、そうそう。
決して、ふん……」
すべてをばらしかけないモンザさんのみぞおちに抜き手で、突きいれると、黙らせることができた。
「そう?。
だったら、いいわ。もし、食べ物で遊んでたら、半殺しね。
特に大好物のエビだったら、発狂して、全員を全殺しするところだわ」
彼女は、言うだけ言って、伊勢海老の切り身を後ろ髪をひかれながらも、寝ているエドワードの元に戻って行った。
とりあえず、怒りが収まったことに安堵し、全てをばれると暴れまわることが簡単に想像でき、真実は棺桶までもっていくことに決めるしかなかった。




