第355話 おっさんが橋に上がるのを見てみよう
猫のおばあさんのお弁当を食べ終えて、ぼぉっと、橋に座って地べたに座っていると、海のほうから、ものすごい勢いでやってくる水しぶきが見えてきた。
察しなくても、さっきのおっさんであることは、明確だった。
そう、遠くから徐々に聞こえてきてるからだ。
「お待たせしましたぞぉ~」
いつもと違い、お腹いっぱいで、足を広げて座ってるナナさんが、
「元気ね、あの人」
「そうでござるな」
ナナさんの白い太ももを枕に横になってるエドワードを羨ましく思いながら、こっちに向かってくるであろうおっさんをみるため、橋の欄干に向かってゆっくりと歩いた。
おっさんは、すごい水しぶきをあげながら、こちらに向かって来ており、魚の申し子なんだろうかと思うほどの速さで、まだ叫びながら向かってきていた。
泳ぎながら叫ぶとか、ほんとに人間かな。それにしても、さっきまで、空腹で倒れてたとは思えない体力だな。
僕は呆れながら、おっさんの行動を欄干からまったりと見つめていた。彼は、こちらの橋に近づくと一旦深く、潜水して近づき、間もなく橋というところで、水底を蹴飛ばすと、水上に上がってきた。だが、橋はそれなりに高い位置だったため、届ききそうになく、空中で目が合うとお互い気まずい空気になったが、直ぐに橋の下に落ちていった。
僕は、欄干から乗り出して、落ちていったおっさんを見ると、ぎりぎりで橋を掴んでおり片手で、落ちるのを阻止していた。僕は手伝おうと手をのばしたが、
「大丈夫、直ぐにあがれるよ」
僕と目が合うと、にたっと笑うと、片手で、欄干の上に飛び上がってきた。恰好つけて上がってきたおっさんだったがよくみると、頭には手のひら大の魚が噛みついていた。それどころか、背中には、くちばしの尖った魚が刺さっており、脇腹にも、大きなトラ柄の魚が噛みついていた。右足には、大きな鋏をもつカニが挟んでいた。左足には、彼の頭と同じくらいのタコが絡んでいた。
よくこれで泳いでこれたなと、改めて感心した。




