第354話 美味しい焼きおにぎりをたべてみよう
僕は、アカリさんからもらった三つの小瓶(聖水)とアミュレットを取り出すと、3本まとめて、おじさんに振りかけた。
体にあたると水滴から湯気がでて、彼を覆い隠すほどだったが、直ぐに海風で晴れてくると、真っ白だった肌が、小麦色の褐色の肌にかわり、真っ赤だった瞳が黒眼にかわっていた。そして、閉じていても発達した牙がわかったのが、外からでは、わからなくなっていた。
驚愕の表情をしながら姿が戻った自分をみると、
「ヒ、ヒビキくんとやら、
なにをしたんだ!?」
「モンテバのギルドでもらった、対バンパイア用の聖水です。
おじさんは体が大きいので三人分使うことにしました」
ナナさんは、腕を組むと頷いていた。
「あぁ、そんなものも貰ってたわね。
貰ってた時は、そんなゴミどうするんだろうって思ってたわ」
「なるほど!
だからでござるな。
まさに、バンパイア化にトドメを刺したででござるな」
「あら、ほんと」
ナナさんとエドワードが仲良く笑ってる中、僕は、アミュレットをおじさんに渡すと
「これを着けてれば、もし完全に退治できていなくても、徐々に退治してくれるみたいですよ」
「そうか、ほんとにありがとう」
おじさんは、泣きながら、立ち上がり僕に抱き着いていたが、あまりの力の強さに息ができず、そのまま気を失うことになった。
僕は、目を開けると心配そうにのぞき込む、美女が見えた。
「ヒビキ君、大丈夫?」
「僕、どうしてたんです?」
「ちょっ、ちょっと、気絶しただけよ。
もう、起きて大丈夫?」
「ええ、体はなんともないです」
禿げたおっさんが、すまなそうにこちらを見ていたが、頭にでかいたんこぶができていて、失神している間に折檻されたんだろう。
「す、すまない、ヒビキ君。
思わず、感謝を全力で表現しすぎてしまった」
「ええ、僕は、もう、へっちゃらですから」
そういって、上半身を上げると、僕のお腹から空腹のサインが聞こえ、みんなは安堵のためか、笑い合った。
「じゃ、ご飯にしましょう」
ナナさんの一声で、誰もこないであろう橋の中央で、テーブルや椅子をだした。
テーブルの上に、朝、おばあさんが作ってくれた弁当箱を3人分、広げた。その内容は、朝食べたものとほとんど変わり映えがしなかくて少し残念だったが、味噌が塗られた焼きおにぎりが二つ入っており、香ばしいにおいを出していた。
その匂いにおっさんが、鼻をひくひくしながら、物欲しそうに見てはいたが、
「流石に、上げませんよ。
さっき、6人分食べたじゃないですか」
「そうよ、今日の夕食と明日の朝のご飯がないのよ」
「そ、それは、
空腹だったとは、いえ申し訳ないことをした。
今から、漁をしてくるから、ゆっくり食べててくれ」
おじさんは、バックから3メートルほどの銛と、かご網を取り出しすと、胴着を脱ぎ、ふんどし一丁になって、橋の上から川に向かって勢いよく飛び込んだ。おっさんは、水しぶきをあげながら海に向かって進んでいくと、あっという間に見えなくなった。
「大丈夫かな。
海も危険なのに」
「大丈夫だと思うわ。周りの宝玉をみると、腕は確かだと思うわ」
ナナさんは、ご飯を食べずに、バックから、イノさんたちの食事を準備すると、3匹は、仲良くかぶりついていた。
そんなナナさんを待つことなく、エドワードは食べ始めていた。
「この三角、うまいでござるな」
「エドワード、まだ、ナナさんが準備してるじゃないか」
「いいわ。まもなく食べれるから」
ナナさんは、バックからポットをとりだすと、僕らのカップに次いで言った。とてもおいしそうな香りがして、どうやらチキンスープのようだった。
「いただきます」
僕は、エドワードが絶賛した味噌の焼きおにぎりを一口食べると、口の中に広がる味噌のいい匂いが広がり、たまにあるおこげが触感を変え、強すぎない塩梅が、この一品だけでいくらでもたべれそうな完成度だった。一気に全部食べかねなかったため、慌てて味わうように、ゆっくり咀嚼し、もう一つをみてみると、もう片方は味噌ではなく、醤油で味付けしたあるようだった。
「ほんと、エドワードの言うように、これは、うまいわね。
焼き魚もほろほろしておしかったけど、あのおばあさんは、料理上手ね」
幸せそうに食べるナナさんをみながら、ほんとは、猫だけどなと思いながら、猫が料理上手なんてリイナは、信じてくれないだろうなと思った。
料理し終わると、上手にできましたとかいってたんだろうか




