第350話 アカリさんと別れてみよう
僕らは、ゲートが見えると、自然に会話が減っていった。
そんな様子にアカリさんは、明るい声で接してくれた。
「そろそろ、お別れですね。
短い間でしたが、寂しくなりますね」
「いろいろとお世話になりました」
「助かったでござる」
「そうだお」
先ほどまでいなかったはずのギノさんの声に振り返ると、後ろから忍び足で付いてきていた。
悲しげな表情のアカリさんが
「この先も強力な魔物がいっぱいいると思いますけど、
無理でしたら、戻ってきてくださいね」
「はい、判りました」
僕は、前のギルドで、ぼろくそに思われたことを思い出し、苦笑いを浮かべた。
「じゃ、行くでござる。
アカリさんも、今度は、気をつけるでござるよ」
「ダナ」
僕とアカリさんは、きょとんとしながらも、ゲートに進んでいたため、問いただす間もなく、ゲートを超えてしまった。ゲートで、僕たちが進んだが、アカリさんは、ゲートで立ち止まった。
僕たちは歩みを止めることなく進むも、振り返りながら、明るく手を振るアカリさんを見ていたが、直ぐに、曲がり角があって、アカリさんの姿は見えなくなった。
寂しかったが、それにしても、うぅ、昨日何があったか、聞きたい
考えないようにしようと、頭を振ると、イノさんのほうを振り向いた。
「ねぇ、イノさん、近くに敵はいる?」
「イル ヨワイ」
「そっか」
強敵じゃないからほおっておいてもいいよね。
すぐに、会話が続かずに困っていたが、話題がないまま一刻ほど過ぎると、眠り姫が起きてきた。
「ふぁぁ、よく寝た。
エドワード、ありがと。
助かったわ」
ナナさんが、ほっぺたにお礼のキスをすると、エドワードは露骨に喜んでいた。
「さぁ、頑張って、次の町にいきますか!」
元気になったナナさんが、エドワードの両腕から立ち上がり、誰よりも早く歩き始めると、全てがどうでもよくなり、明るく輝く海を見ながら、遠足気分で歩き始めた。
更に、二刻程歩きお腹が空き始め、そろそろお昼時だというところで、大きな川が見えてきた。
「あっちに橋があるでござる」
エドワードが、指さした先には、大きな橋が架かっており、それ以外で渡るには、濁流の川を半時は泳ぐ必要がありそうだった。
「あれを渡ったほうが楽そうね」
「しかたないですね。
遠回りになりそうですけど」
僕らは、川沿いを歩くと、大きな木造の橋に向け歩き出した。
「ハコボウカ?」
「いいよ、少し歩けば、安全に橋で渡れそうだし」
「ソウカ」
小さなやり取りをしている間に、大きな橋の全貌がみえるところまで、たどり着いたが、真ん中に人影が見え、この後問題になりそうだった。




