第346話 体を洗ってあげよう
誤字変更
僕は立ち上がり、イノさんたちに声をかけた。
「イノさん、露天風呂にいきましょう」
「イク」
「やだお」
「@いきたくない@」
三者三様の答えだったが、決定権はイノさんにあったため、他のウサギと蛇は、ついていくしかなかった。正直に言えば、血のりや汚れ、誇りなどで、悪臭と汚さがあり、ナナさんが嫌がったのは、これじゃないかなと、思っていた。
「ナノさんもギノさんも、浸からなくても汚れは落としましょう」
「やだお」
「@めんどう@」
どうやら、本気で嫌がってるわけではなさそうだが、これ以上の説得はできそうになく、現場でどうにかできるか、やってみるしかなさそうだった。
僕は、ドアを開け、イノさんとともにを外にでた。隣で泊まっているであろうナナさんたちは、人影がなさそうで、真っ暗だった。
もう、寝たのかな、それとも、露天風呂のほうに行ったのかな。
判断は、つかなかったが、呼ぶことはせずに、おばあさんが言っていた道を、歩き始めた。すでに日が落ちており、真っ暗な道だったため、イノさんの後ろを歩きながら、進むことにした。
よく見えない山道を、イノさんの後ろにぴったりと寄り添いながら、右往左往と、登っていくと、開けたところに、かがり火がついており、簡易的な建物が見えた。
「どうやら、あそこみたいだね」
「ウン」
「@ちがうきがする@」
「ぜったい、あそこじゃないお」
明らかに嘘とわかる二匹の発言は無視し、扉を開けると、中にも明かりがはいっていることで明るく、簡易的な棚にいくつものザルが置いてあったが、どれも裏返されて、使われている形式がなかった。
「まだ、二人は、来ていなさそうだね」
「いないだお」
「@さがしにいこうよ@」
二匹のいや、一匹のいうことを聞かず、僕が入るのを待っているイノさんのために、急いで服を脱ぐと、湯気がもうもうと出ている奥に向かって歩いて行った。
「スベルカラ キオツケロ」
先頭を行くイノさんの言うとおり、石畳は、たまに溢れるのか、湯舟からの温泉で濡れていて暖かく、ぬるぬるしていることで、滑りやすかった。
忠告を聞いてなければこけてたかもしれない。
「ありがと、おかげで、こけないですんだよ」
「ウンウン」
すぐに洗い場まで到達すると、
「イノさん、体、洗うからそこに座って」
僕は、自分が洗うのを後にすることにし、洗い場にイノさんを座らせると、大人しく従った。
「タノム。
アリガタイ」
体の大きなイノさんに、何回かゆっくりと湯舟からお湯をかけていくが、毛が湯水をはじき、なかなか吸い込んでいいかなかった、根気よくかけていくことで、じわじわと滲みていった。
「じゃ、洗っていくよ」
僕は、備え付けの石鹸をもって、直接背中から当てていくと、今度は逆に直ぐに泡だって、頭から足まで全身泡で真っ白けに生き物に変わった。その間、少しでも濡れまいと、壁に回り込み隠れていた。
僕は、二人に水しぶきがかからないようにゆっくりをお湯をかけると、さっきまで、薄汚れて毛並みがピッカピカになり、見事な虎柄が現れた。
「すっごくきれいになったよ。
じゃ、次、ナノさん」
「@だ、だいじょうぶ、ナノはいないよ@」
頭を抱えて小さく隠れていたナノさんを抱きかかえ、目にお湯がはいらないように、丁寧にお湯をかけ、タオルで、汚れを落としていくとこちらも、真っ白いウサギに変わっていった。
綺麗になった自分をみると、
「@いがいといいものね@」
満足げな表情をうかべているので、湯桶にお湯を張るとゆっくりとその中に入れてあげた。
「@こっちも、あったかくて、いいわ@」
顎を湯桶にのせ、満足そうに眼を瞑っていた。イノさんは、既に、手前の温泉に浸かってのんびりしていた。
「最後は、ギノさんだよ」
「ぼ、ぼくは、ふようだお」
僕は、ギノさんの近くに座り、タオルを一度綺麗にあらうと、ギノさんをあったかい濡れたタオルで汚れを落としていった。
「これだけ?」
「うん、これだけ。さっぱりしたでしょ?」
「判んないけど、まんぞくだお」
不安がとれたのか、イノさんとナノさんの近くで移動すると、たまにくる温泉のお湯だけで、満足しているようだった。
僕も、体を洗い汚れを落とすと、イノさんの隣から、ゆっくりと入って行った。温泉は無色透明で炭酸が下から泡として、でており、硫黄の香りがほのかに香っていた。
こちらは、入り口のようで、湯温が低く山からくるそよ風が肩を抜けていくと、おもわずそのまま眠りにつきそうだった。目を瞑って真上を向いていたので、目を開けると満点の星空が広がっており、とても幻想的だった。
僕は、しばらく体が温まったら、立ち上がり、奥に向かってゆっくりと歩きだすと
「きをつけるだお」
ギノさんの抜けた声が聞こえたような気がしたが、気にせず進んでいった。温泉はかなり広いようで、奥は明かりが届いていなく、真っ暗だった。ゆっくりと歩いていたおかげか足が岩にぶつかり、思わず下を見ると、その先は崖になっており、下は暗闇で底が見えなかった。
僕は、背中に冷たいものがはしり、ゆっくりとあとずさりし、急いでイノさん達のもとに戻った。イノさん達は、僕のことは全く気にしていなかったが、ふと見ると、右側の岩で囲まれたところで、三毛猫が温泉に気持ちよさそうに浸かっていた。
僕をみるとねこは、みやぁ~とかわいく鳴いた。
「前からいました?」
「@さっき、来てはいったよ@」
「そうなんですね」
僕は、ぬるくなったナノさんのお湯を変えていると、つまらなさそうに猫は、立ち上がり、脱衣所に向かっていった。
だいぶ早風呂だなぁ
と僕は、思いながら、まったりしている3匹に合わせて、僕も露天風呂と星空を満喫することにした。




