第343話 嘘に嘘を重ねてみよう
僕は、神妙な顔つきで隣にいるアカリさんを目を見つめると、
「じつは……」
「実は、なんです?」
僕がさらに見を乗り出すと、エドワード以外のテーブルにいた全員が同じように身を乗り出した。
「実は、イノさんがつれているサルは、大サルで神獣なんですよ。
ですから、町にはいれるんですよ」
「そうだったんですね。
しかも、雷を操るんでしょ?」
「ええ、それに、腕の一撃は、どんな敵も倒しますよ」
アカリさんは、信じた様子で驚き、ナナさんは口出さないためか、前のめりを辞め、お酒を飲み始めていた。
「よく、そんな獣を従えられましたね」
「違うんですよ、イノさんを従えてるんです、神獣が!」
「そうだったんですが!
そんな秘密が……。
あ、だから、神様のところに行くんですね」
「行くっていうより、戻る、帰るが目的ですが……
絶対、秘密ですよ」
僕は、体勢を戻すと、
「見つかると、みんな恐怖すると思うので、見つからないようにしてたんですが……」
「バンパイアの件で、ビクビクしてましたから。
見知らぬものは、警戒しちゃいますものね」
「そうね」
最後に、ナナさんが同意をすることで、話が一区切りできたようだ。
この後、しばらくすると、いくつか〆の料理がでて、デザートもいただき食べ終わると、そろそろ、戻るころかなと思っていると、アカリさんが声をかけてきた。
「じゃ、イノさん達が、待ってると思うから、
送って行きますよ」
「ありがとう」
僕は、入り組んだ先の通路で、戻ることができないため、提案がありがたかった。
「じゃ、いきましょう。
起きて、エドワード」
ナナさんが、隣で寝てるエドワードをゆすったが、起きる気配が無かったので、ナナさんが、両腕に抱きかかえた。
手伝いが必要かと思ったが、全然苦もなく抱きかかえてるのをみると、手伝いは不要に思えた。
僕は、アカリさんと並んで歩き始めて、横を向いた。
「ここからだと、あと、どれくらいかかるの?」
「直ぐですよ♪」
酔いが回ってたのか、千鳥足のアカリさんは、僕によろめくと、腕を絡んで、頭を腕に付けてきた。
「ふふふ♪
こっちです♪」
「え、ええ」
僕は、背中に冷たいものを感じると、ナナさんがにやっと笑っており、一瞬で酔いと夢気分が醒めていったが、下目遣いで楽し気にしてるアカリさんを振りほどくことができなかった。
決して、腕にあたる胸の柔らかみを感じたかったわけじゃない、たぶん。




