第342話 小料理屋で食事をいただいてみよう
店の引き戸から、可愛らしい笑顔のアカリさんが、こちらに向けて呼びかけていた。
「ヒビキさん、
もう、入っていいみたいです」
「わかりました。
今、行きますね」
僕は後ろを向いてナナさんとエドワードをみると、3人で縦に並んで店に入って行った。中は、4人掛けのテーブルが二つと、カウンターに4人がすわれるだけの小さなお店だった。既に、カウンターと手前のテーブルには、ギルドの服を着た職員が座っており、僕は、奥のテーブルに向かって入って行った。
どうやら、僕ら以外が入らないように、ギルド職員でうめてくれたようだった。
僕らは料理を作っていた店主の前を歩くと、目が合い声をかけてくれた。、
「いらっしゃい。
小さい店で、悪いけど」
奥のテーブルの手前でたって待っていたアカリさんが合いの手をだした。
「ここのおやっさんは、口は悪いけど腕はいいのよ」
「口が悪いだけ、余計だよ」
「あ、愛想もわるいかも♪ふふ♪♪」
けらけらと笑うと、店中のギルド職員も笑い、分が悪いと思ったのか、厨房で、料理に集中した。
僕らが席に着くと、アカリさんが最後に空いていた僕の隣に座った。
「すみません、騒がしくして」
「いえ、仲がいいんですね」
「ええ、よくくるんです。
安くて、美味しいんですよ」
「あいよ」
冷たく冷えたエールが、4つテーブルに置かれ、各々がグラスをとった。
「では、ヒビキさん、旅、お疲れさまでした。
次の旅も頑張ってください、
かんぱ~い」
「「「カンパーイ」」」
店中にいる人、店主も含めて高らかにグラスを掲げ、みんなが、一気に飲み干した。
ぷあふぁぇ~
それは、よく冷えており、あっという間に胃に収まった。
「いいのみっぷりだね、はい、お代わり」
直ぐに二杯目が渡され、僕とナナさんは、また一気に飲み干すと直ぐに3杯目をお代わりした。
3杯目が届くと同時に、野菜のお浸しときんぴらや枝豆などの軽めのものが、テーブルに置かれた。
僕は、置かれただし巻き卵を一つ食べていると、アカリさんが質問してきた。
「ヒビキさん達は、明日の朝に出発するんですか?」
「ええ、早く、リイナ達と合流しなくちゃ、いけないから」
手のひらサイズの鳥の照り焼きを持ってきた店主が、
「残念だね、アカリちゃん、ははは」
「何がですか、もう」
慌てて否定し、急に立ち上がったせいで、テーブルが揺れ、エドワードのグラスが倒れかかったが、倒れる直前にナナさんが、グラスを掴んだことで、倒さないですんだ。
「ふふふ、
あわてちゃ、駄目よ」
「すみません」
アカリさんは、下を向いて謝ったが、ナナさんは、そんな様子をほほ笑んでいたが、目線は僕のほうをみて、何か言いたげだった。
「もう、ナナさん、やめてください。
さ、アカリさんも座って」
「は、はい」
店主が次の料理の大きな半身のマヨネーズ焼きを全員分置いてきた。
「で、お兄ちゃんたちは、何のためにこの旅をやってるの?」
「大陸の問題を、救う・た・め?」
僕は、口に出しながらも、本当にそうなのか判断できなかった。
「そうでござる
ペテ殿に原因をつきとめてくれと言われたでござる」
「そう言ってたわね」
まだ開始して間もないのに、既に、べろべろのエドワードは、楽し気に語っており、また、濃そうなお酒を飲み始めていた。
「そうだっけかなぁ。
何にも、でてないよね」
「そんなことないでござる。
イノさんたちは、犯人をみてるでござるよ」
「そっか、しん……
させた相手でもんね。どんな人たちか聞いた?」
危なく進化と言いかけたが、何とか最後まで言うのをやめることができ、僕は、エドワードを見たが、既に眠っていて、返答は聞けそうになかった。
「まだ、聞けてないと思うわ。
このあと、宿に戻った時に詳細を聞いてみればいいじゃない」
「じゃ、私も行っていいですか?」
目を輝かせて、こちらを見てるアカリさんには、悪いと思うが、巻き込むわけにはいかなかった。
「それは、ちょっと……」
「知らないほうがいいことは、あるのよ」
アカリさんは、目線を上にし思い出しながら、顎に人差し指をあげると、
「そういえば、町で言ってた、大ザルと何か、関係あるんですか?」
楽し気にこちらを見ると、一瞬僕は真顔になり、ほんとのことを話すか、考えなおしてみることにした。




