第339話 エドワードを送り出してみよう
気を落ち着かせながら、アカリさんの隣を歩いていると、続々と人が大通りに出てきているようだった。
「どうやら、みんな外が気になってるようですね」
「そのようですね。
しばらく、出てきませんでしたから。
そろそろ、みんな、酒場で乾杯したくて、しょうがないのかもしれませんね」
「そうなんですかね。
じゃ、今日は、夜通しな感じでしょうか」
「だと思いますよ。
特にヒビキさん達は、隣の村から強敵を倒してきたのが判ったら、
質問攻めにあったあと、朝まで、どこまでも、連れまわされますよ」
「それは、ちょっと面白そうですけど、
それだと、出発できなくて、こまっちゃいますね」
僕は、想像し始めると先ほどの谷間を思い出し、頭を振って考えるのをやめた。
「ふふふ♪
そうですね。
次の村も食料を持ってますし、届くのが遅れると、困ちゃいますから、
無事送り出すまでが、私の仕事になりそうですね」
「なるほど、頼りにしてます」
アカリさんが、右手を握り締めて、
「任しといてください。
ギルドメンバーと協力して、来ないようにガードしますから」
「それは、助かります」
アカリさんは、はっと思いついたように、バックを物色し始めた。
「あ、忘れてました。
これ、頼まれてました別分の食料です」
「ありがとうございます」
アカリさんは、バックから、ブロックの肉や野菜、魚など、数日分を手渡してくれたため、幾つかをエドワードに渡して、後は、ナナさんに渡した。
「エドワード、悪いけど、
イノさん達に渡してきてくれないかな。
絶対、町の人に、見つからないようにしてね」
「判ったで、ござる」
エドワードは、華麗に、雨どいから屋根に上がると、二階へ三階へと次々の建物へと移っていった。
そんな様子を見て、行く先を見逃さんとばかりに、アカリさんが凝視していた。
「アカリさん、凝視やめて貰えますか。
見られてるとわかると、緊張すると思いますので……」
本当は、姿を見られると、やばいからなんだけどね
「ちょこっと、なら、ね♪」
片目を瞑りながらお願いされたが、
「やめてください。
ほんと、お願いします」
僕が真面目な顔で、答えると、諦めたのか、反対側をみるようにしたようだった。
「判りました。
そこまで言うからには、何か事情があるんでしょう。
でも、ちょびっとなら」
そういって、さらに拝むようにアカリさんが僕の前にたつと、
「もう、駄目ですってば。
ナナさんからも、言って下さい」
そういうと、僕はナナさんのほうを振り向くと、エドワードのほうを見ていたナナさんが、頭を抱えて、深いため息をついて、下を向いた。
「ヒビキくん、エドワードに任せたのは、失敗だったみたいよ。
ほら」
エドワードが行った先の道路から、逃げ惑うような人々が勢いよくこちらに向けてやってきていた。




