第338話 悩殺されてみよう
胸をなでおろして、アカリさんを待っていると、声をかけてくる女性の声が後ろから聞こえてきた。
「ねぇ、もう、安全なの?」
「ええ、だ……
ぶっふぉぉ」
振り返った正面には、20台後半の金髪のショートで、口元のほくろが妖艶さをかもしだした女性が立っていた。特に目を奪われたのは、胸の谷間がくっきりが見え、ぎりぎりトップがみえないぐらいで、少し揺れればみえるのではないかというくらいだった。その上に、これでもかというくらいのミニスカートでこちらも少し揺れれば、見えるんではないか言うくらい露出が高い恰好だった。
「バァ、バンパイアなら、退治されましたよ」
僕は、意識的に顔を横にしたが、どうしても、目を離すことができなかった。
「それは、よかったわ、うふ♪」
女性は、僕に近づくと、両手を掴み顎につけ拝むような恰好をすると、巨乳が挟まれ、より一層谷間が強調された。
ぐっはっ
あぶなく声がでそうだった。
「それにしても、どこの人なんでしょう。
知ってる?
ぜひ会ってみたいわ」
女性が、顎から両手を両肘にあて、くの字でになりながら、上目づかいで僕のほうを向くと、先ほどよりも谷間が主張していた。
これは、だめかもしれない。
僕は、一歩下がり、目を瞑り深呼吸すると、なるべく構わないようにしようと、
「さぁ、誰でしょうか。
きっと、凄い人なんだと思いますよ」
考えをかえるため、エドワードのほうをみると、身長が足りないせいか何も見えていないようで、ナナさんのほうを向いていた。
むぅ、もったいない
僕が後ろを向いているうちに、彼女は、僕に密着すると、耳元でつぶやいた。
「そう。英雄よね。
だったら、一晩くらい相手してあげてもいいのに」
「ぼ、ぼ、ぼくじゃないですよ」
「ふふふ、かわいい。
まぁ、倒したあいてじゃなくても、いいか・も・ね♪」
「え、えっ、え」
僕がきょどってると、ギルドから、アカリさんが帰ってきた。
「ヒビキさん、お待たせしました。
あれ、ママ、何してるの?」
いつの間にか、距離をはなしていた女性だったが、残り香が鼻腔を刺激し心臓の音がきこえるくらい激しさは、落ち着きを取り戻していなかった。
「アカリ。
どうもしないわ。
初めて見た冒険者さんをみたから、声をかけてみただけよ」
「そう。
すみません、ヒビキさん。
母が変なこといってませんでした」
「へぇ、変なこと言われてませんよ」
思わず声が裏返ると、事態を察したのか、口調が呆れ気味になった。
「またなの。
もう、いい加減にしてよね」
「いじゃない。少しくらい」
「もう、いいです。
さぁ、ヒビキさん、行きましょう」
「は、はい」
僕は、アカリさんに両肩に手を当てられ押されると、前の道に進んでいった。
「ヒビキくん、いつでも相手をするわよ♪」
「しなくていいです!!
大人しく家に帰って下さい!!」
僕らは、アカリさんに連れられて進んでいくと、後ろからナナさんに声をかけられた。
「せっかく、面白かったのに。
りぃちゃんに報告するネタができそうだったのにね」
「もう、やめてください、ナナさん」
「なんか、あったでござるか」
「なんでもない!
いや、なんにもないよ!!」
「へんな、ヒビキ殿でござるな」
ようやく姿が見えなくなったことで、残念な気持ちになったのは、絶対に口に出して言うわけにはいかなかった。




