第334話 蝙蝠を退治してみよう
一階の大ホールには、みんな何かしらの仕事にもどっていったのか、既に誰も居なかった。
「みんな、もういないんですね」
「ええ、帰らせ増した。
みんな、不安なんですよ」
「バンパイアですか……」
「ええ、みんな不安なんですよ」
「どうにか、元にもどせたりできないものなんですか?」
「いろいろと神父さんと話したら、完全体まで変異しなければ、特別な聖水を振りかけた後、魔毒除けのアミュレットを付け続けることで、毒素が無くなり、元に戻せる可能性があるようです」
「そうなんですね」
「みなさん分は、準備してありますので、どうぞ」
アカリさんは、バックから、3人分の小瓶三つとアミュレットを取り出すと、一人づつに渡してくれた。
「ありがとうございます」
「当然ですよ。
使わないに越したことはないんですけどね……」
ギルドの扉を開けると、陽が落ちて辺りはまっくらになっていた。静まり返っていたが、耳を澄ますと上空で、羽の羽ばたいている大きな音が聞こえていた。
僕は、上空を見上げ旋回している巨大蝙蝠に指をさすと、
「あれですか?」
「ええ、そうなんです」
「ずっと、あんな大きな音をだしてるんですか?」
「ええ、そうなんです」
「威嚇してるようで、怖いですね」
巨大蝙蝠は、優雅に飛び回っていたが、その上に雷雲が徐々に大きくなっていった。
「ヒ、ヒビキ君、あれって」
「え、ええ、指刺したのがよくなかったようですね。
どうしましょう」
僕の想像どおり、一瞬で雷光が10何本も巨大蝙蝠に落ち通過し、ギルドの屋根に落ちて、地上に抜けていった。巨大な蝙蝠は、一瞬で灰にかわり光の粒子となって消えていった。
「な、な、な、な、なにが起きたんですか?
ヒビキさん!何か知ってるんでしょ!!」
僕とナナさんが引きつった顔をしていると、
「イノさんでござる」
「イノさんとは、どういう人なんですか?
紹介してください」
「イノさんは、ヒト……」
僕は、慌てて人ではないといいそうなエドワードの口を塞ぐと
「ヒト見知りが激しくて、来たくないってことで、別行動してるんです。
道中で知り合って、協力して旅してきたんですよ」
「目的は、神様に会いに行くんだそうよ」
僕とナナさんの視線が泳ぎ、あからさまに挙動がおかしかったが、アカリさんは気づいていないようだった。
「そうなんですか、残念です。
それにしても、神様ですか、魔王様じゃなくて?」
「たぶん、魔王様なんじゃないかなと思ってるんですけどね」
「魔王様に行く道なら、次の村で、祠へ続く道がありますから、
そこから、行くことができますよ」
「そうなんですね。
あとで、教えてみます」
僕は、話が変わったことに安堵し、ようやく落ち着いて辺りを見回すと、様々な家から、
今起きたことを確認しようと、窓から様子をみたり、家から出てきたりしていた。
パニックがおきそうだ、囲まれる前に退散しなきゃ。




