第333話 お願い事はできる形でひきうけてみよう
「たぶん、同一だと思います」
驚愕の表情から戻り、アカリさんとシルバさんの顔が一瞬だけ、明るくなったが、また暗い顔に戻った。
「すごいです!!
もしかしたらと道中を心配しておりましたが、
まさか、退治してくとは……
怪我もなさそうで、何よりです」
「ええ、ほぼ、ヒビキくんが退治したんですよ」
「ナナさん、言いすぎですよ。みんなの力ですよ。
それはそうと、他の3匹はどうなったんですか?」
「それが、今も、町の上空で監視されておりまして、
バンパイアを退治してもらいたいんです……」
「他の冒険者さんでは、引き受けられなかったのでしょうか?」
「顔なじみってことで、皆さん嫌がられまして……
それに、腕利きでしたので、倒せるとは、思えないらしいとも、理由が……」
「判りました。それで、私たちってことなんですね」
ナナさんが、目をつむり、覚悟したように呟いた。
「ですが、我々では、上空の敵を攻撃できません。
もし、次の村に行く途中で、襲われたら、で、いいでしょうか?」
「判りました。それで構いません」
「では、申し訳ないのですが、それで。
他に、用がなければ、私たちは、宿に戻ります」
「村に行く途中で、物資の輸送をお願いしたいんですが、
こちらも頼めますか?」
「判りました。そちらも、お引き受けします。
村のギルドに渡せば、いいんですね?」
「ええ、このバックをお渡しください」
既に応接室の端にバックは用意してあり、アカリさんが持ち上げると、僕に手渡した。
全員が立ち上がると、これまで、何も話さなかったシルバさんが声を出した。
「やはり、シュシュから聞いてた通りですね。
重度の期待を持たせないように配慮しながらも、代替案を踏まえて、要望に近い提案をしてくる。
ヒビキ様なら、必ず我々の要望を聞いて下さると思っておりました」
僕は、苦笑いを浮かべながらほほを描くと
「僕じゃなくても、みんな受けますよ」
「私は、受けないわ」
「拙者も、断るでござる」
「な、なんで!?」
「お金にならないことはしないわよ、普通。
まぁ、リィちゃんなら引き受けるでしょうけど……。
二人は、よく似てるわね♪」
「うぅ」
そのやり取りを聞くと、シルバさんは笑顔にもどり、話始めた。
「ささやかでは、ありますが、
宿と宴を用意してますので、アカリに付いて行って下さい。
私は、この後、市長と話がありますので、後で顔を出させていただきます。
じゃ、任せましたよ」
「判りました」
僕らは、シルバさんを置いて、部屋をでると、アカリさんと共に、階段をおりていった。




