第320話 ウサギに餌をあげてみよう
僕は、弁当の中にはいっている焼き魚をたべていると、昨日の話を思い出した。
「なにか、森に入ってしゃべるサルをみたって
いってましたよ。しかも救ってもらったって」
「拙者は、別の話を聞いたでござる」
エドワードは、ステーキを頬張りながら、口に物が無くなると話始めた。
「どうやら、モンスターに襲われたときに、虎が出てきて、代わりに戦ってもらったって」
ナナさんは、とんかつを一切れおいしそうに食べながら、
「へぇ~。
私が聞いたのは、迷子の子ども。
ギルド職員の娘が森で迷子になった時に、ウサギに誘導されて、森から町に戻れたって話だったわね」
「ちょうど、あんな感じでござるか?」
エドワードが、向いていた目線の先の茂みに、白い獣の姿が見えた。
「そうそう、あんな感じじゃないのかな。
え!?」
僕と、ナナさんは、事態を把握して、驚いている中、エドワードは、気にする様子もなく、肉の塊を食べ始めていた。
「さっきまで、気配はなかったですよね?」
「え、ええ。
ま、まぁ、いいわ」
ナナさんは、食べるのをやめると、バックからレタスを取り出した。
「ナナさん、上げる気ですか?」
「聞いてた話では、いいウサギなんだと思うわ」
椅子から立ち上がり、ゆっくりとウサギのほうに歩いて行った。
「そのウサギとは、限りませんよ」
「大丈夫でござるよ」
エドワードが適当な発言を行っていたが、僕は、食べるのをやめ、歩き始めたナナさんの様子を見始めた。ゆっくりとウサギに近づき、一メートル手前に所にレタスを置いて帰ってきた。ウサギは、様子を見ているようで、ナナさんが戻ってくるまで、ピクリとも動かなかった。
よかったぁ。
「あの位の距離だったら、大丈夫だったわ」
「のようですね」
僕は、安堵し、残っていた焼き魚を食べながら、ウサギの様子を窺ってると、少しづつレタスに近づいて行き、到達するとゆっくりと食べ始めた。
だが、ウサギには、短い尻尾がなく、何かに繋がっているようで、白い太い線のようなものが、草むらに続いていた。
「ナ、ナナさん、あの尻尾?」
「どうやら、ウサギじゃなかったようね」
僕とナナさんは、食べるのをやめ武器を取ると、線の先の茂みを集中して観察し始めた。しっかり、みてみると、茂みの奥に、黄色丸のような物が見えた。
「ドウヤラ、ミツカッテ、シマッタヨウダナ」
太い声が辺りに響き、僕とナナさんが驚いていると、エドワードは、嬉しそうに、3枚目のステーキを食べようか思案してるようだった。




