第314話 雷雲を消し去ってみよう
音が聞こえているほうを振り向き、
「あれって、モンスター」
僕が指した上空には、小さな雷雲がポツンと浮かんでおり、辺りは快晴で雲一つなく違和感が醸し出されていた。
「知らないわね」
「拙者もでござる」
「でも、あからさまにこっちに、向かってくるわね」
ナナさんが、こぶし大の石を拾うと、上空の雲に向かって投げつけたが、ぽっかりと穴が開いたが、やがて何事もなかったように塞がった。
「これは、やっかいな……
逃げて!!」
雷雲が、ばちばっちと音が鳴ると、僕らめがけて稲光が光った。紙一重で、ナナさんが地面に刺した槍が避雷針となり、直撃は避けられたが、衝撃が、僕らにあたり、その場から吹っ飛んだ。あたりには、すさまじい爆音が響き渡った。
どっご~ん!!!!
直撃したらと思うと、こわっ~
「た、た、助かったでござる」
「真っ黒こげになってたかもしれないわね」
いまだに、槍は、バチバチと言っており、近づけなかった。
「これは、倒さないことには、どうすることもできないわね」
「拙者に任すでござる
一角馬殺!!」
バックから、一本の発破を取り出すと、雷雲めがけて投げ付けた。だが、発破は、僕らと雷雲のちょうど中間で、雷にあたり、すさまじい爆音とともに、爆風で、僕らは吹き飛ばされた。
どっどっご~ん!!!!
転がりながら、雷雲を見ると、真っ赤な魔玉が見えた。転がり終わり、直ぐにその場に立ち上がったが、魔玉は雲に隠れて既に見えなくなっていた。
「ナナさん、見えましたか?」
「見えたわ」
「チャンスです、まだ、全部、雲にもどってません。
今から、雲をまとわせないようにしますので、
割ってください」
「任せといて」
僕は、風の魔法を強くしたイメージを浮かべると、魔玉があったであろう場所に向かって唱えた。
「強風!」
風は、徐々に強くなっていき、魔玉に集まろうした雲を蹴散らし始めた。やがて、うっすらと真っ赤な魔玉が見え隠れし始めた。
「惣龍飛翔突!」
いつもの槍と異なり、投げやすい石だったせいか、目にもとまらぬ速さで、手から離れるとすぐに魔玉に当たり、一瞬で砕け散ったかと思ったら、あっという間に、空の彼方まで飛んで行った。
「お見事でござる!」
「はぁ、怖かった」
「今回は、危うかったわね」
三人で、槍の傍に腰を下ろすと、緊張の緩和により笑いあった。
「あんな危険な敵とは、戦いたくないわね」
「ですね」
「そんなとこ悪いでござるが、
砂浜から、3体ほど、こっちに歩いてくる大きな影が見えるでござるよ」
エドワードが指した先には、上半身が人の形をした、サソリ3体だった。




