第313話 ナメクジを退治してみよう
僕が出した氷が解け始め、海面に向かって水が流れ始め、砂浜はぬかるんでいた。
「もう、ヒビキ殿のせいで靴がぐちゃぐちゃでござる」
「ごめん」
「いいのよ。
誰も怪我がなかったし、それが一番よ。
靴がびしょびしょだけど」
フォローしているようでされていないと思いながらも、僕自身の靴に水がしみ込んで、歩く度に不快感があった。
しばらく、二人が文句を言いながら歩いていたが、それでも、少し歩きづらいのを我慢しながら、ようやく、ぬかるんだ部分が過ぎ去ると、魔法の風で3人の足元を乾かせると、不満もなくなっていった。
エドワードが遠く小さな点みたいな場所を指さすと、
「そうね、あの遠く離れたところ見たいね」
「急いでも、今日中には着きそうにないでござるな」
「夕方ぐらいに、一泊できそうな場所を探しながら、行く必要がありそうですね」
「久しぶりに野営だわ」
「僕もです」
「拙者は、初めてでござる」
「あっちの大陸は、魔馬車などが発達していたり、徒歩で移動しきれる距離に村があったものね」
「そうでござる。
実際は、姫様との旅が初めてだったでござるから、4つぐらいの都市しか行ったことがないでござる」
「じゃ、初めていくところばかりで、
楽しいでしょ」
「そうでござる!!
旅はいいでござるな!!!」
会話をしながら、進んでいると案の定、本日も、いびつな大きさの青色のナメクジを発見した。
「また、でかそうね」
「そうですね、まわりが酸で溶けたような跡と、
通ったであろう道も溶けてますね」
「接近戦は、嫌でござるな」
「じゃ、僕の魔法のあと、エドワードの発破でいこう」
「了解でござる」
ナナさんは、自分の番がなくて悔しそうだったが、動きがもっさりしているナメクジの安全圏から魔王の手を放ち、想定通りの攻撃で、難なく敵を倒すことができた。
「動作が素早くなければ、
ヒビキ君の魔法は、相性が抜群にいいわね」
「確かにでござる」
「そうなんですよね、動く相手が難しくて……
特に、空とか……」
僕が話していると、上空から何者かが、こちらに向けてやってきていた。




