第306話 村人の話を聞いてみよう
僕の隣に座ってきたギルド職員の男性が話かけてきた。
「ヒビキさんは、しゃべるサルに会われました?」
「サルですか?
会わなかったですね」
シュシュも話に加わってきた。
「彼が言うには、森の中でモンスターに襲われたとき、サルに助けられたっていうのよ。
変な話しでしょ?」
「全然、変じゃない!
俺を救ってくれた英雄だ!」
声を強めに話す男性をなだめ、詳細な話を聞いてみることにした。
「そのサルは、どんなサルなんですか。
小さいんですか?」
「おぉ、ヒビキさんは、信じてくれるんですね。
どっかの赤毛とは違いますね」
「赤毛は、地毛なんだから仕方ないでしょ」
「まぁまぁ、話を詳しく聞かせてください。
僕は、二人にお酒を注ぎと、次の話を聞くことにした。
「顔だけしか見えなくて、全身は見えなかったんですが、顔だけでこのぐらいですね」
ジェスチャーで表現されたその大きさは、60cmくらいあり大型な動物だと予測させた。
話を盛ってるにしても、人と同サイズで話ができる知性があるのか。
「馬鹿げてるわ。
襲うならまだしも、助けられるとか」
「現に、俺は『ココハ、マカセロ、ニゲロ!』
って、でっかいカミキリムシに襲われて、殺されかけたときに言われたんだって」
「僕は信じますよ。
それにしても、人を助けるサルかぁ。
次の都市に行くときに僕も助けてもらえるかなぁ。
で、その後、目撃情報とかあるんですか?シュシュさん」
「あるわけないでしょ。
夢か幻でも。みてたんでしょ」
シュシュさんは、ぐいっと酒を飲むとけらけらと笑い出したが、話ていた本人は、特に怒るわけではなさそうだった。
「確かに、その後、話を聞かないし……
幻だったんだろうか。
それとも、死んでしまったのか……」
「なかなか、不思議な話ですね」
彼の話が一区切りついたところで、左隣の女性が話しかけてきた。
「ヒビキさんは、明日、モンテバに向けて出発するんですか?」
「隣の都市は、モンテバというんですか?
であれば、その予定です」
「「「「「じゃ、あれを退治してもらえるんですね」」」」」
「あれ?」
どうやら、次の都市に向けて出発すると、またも、強敵が、見える範囲のところで待ち構えているようだ。




