第305話 赤毛の女性の名前を知ってみよう
僕は、乾杯の音頭が成功したことにほっとしていると、ギルドマスターが話しかけてきた。
「乾杯の音頭お疲れ様でした。
それにしても、道中大変でしたでしょう。
ここに来るまでに、どんな敵を倒してきたんです」
「いろんなですね、貝やトンボとか……」
どうやら、例えが悪かったようで、反応が薄いのを察した二人が助け舟を出してくれた。
「貝なんて、この建物よりも大きかったでござる!」
「トンボも、頭が私の顔よりも大きくて、しかも、口がギザギザで、怖かったわ」
ナナさんが、身振り手振りで話すと、全員がナナさんを凝視し、大げさかと思うほどに、驚き恐怖の顔を浮かべていた。
「それを退治するなんて、
皆さん、お強いんですね」
町長がお酒を一口飲みながら、相槌をうってくれると、隣のギルドマスターが隣の赤毛の女性をちらりとみてから僕に話かけた。
「そういえば、シュシュ。
ヒビキさんとお話はしたのかね。
あんなに、楽しみにしてたじゃないか」
赤毛の女性が、急な問いかけにギルドマスタ-のほうを向き驚くと、
「もう、ギルマス、せっかく知らないふりして、
驚かせようと計画してたのに」
「それは、よくないですぞ。
ヒビキ殿は、この町を救ってくれた英雄なんですぞ」
「それは、そうですけど、町長」
「それはそうと、
どんな話なんですか?
僕に話したい内容というのは」
「それは、ですね……」
「ちょっと、ギルマス。
後で、私から話しますから、言わないでください」
「そうか、話したかったのに、残念だな」
「じゃ、後でってことで。
楽しみにまってます、シュシュさん」
とりあえず、赤髪のギルド嬢がシュシュさんということが分かった。
この後も、どんな旅だったのかを聞かれ、二人に会話を足してもらうことで、時には愉快に、時には恐ろしく話をすることができた。
みんなが真剣に聞いていたが、一時ほど経過すると、酒が大いにまわり、いろいろなテーブルで最近の話をし始めた。
「では、私たちは、この辺で失礼します。
お宿は、手配しておりますので、お使いください」
「あと、どんなご要望でも、叶えられるものはお聞きしますので、
シュシュにご相談ください」
町長とギルド長が立ち上がり、深々と礼をすると僕たちも慌てて立ち上がり、併せて礼を返した。
「じゃ、シュシュ。
後は任せたよ。
迷惑をかけないように」
「大丈夫ですよ、任せてください」
シュシュさんが、ほっぺを赤くし、酔っているせいか目が座っていたが、その返答を聞くと二人は、酒場から出て行った。
お偉いさんが居なくなると、ナナさんやエドワードが他のテーブルに連れていかれ、僕の周りもいろんな人が囲んで話始めた。




