第296話 二手に別れてみよう
全員がギルドから出ると、ナナとリイナが別れの挨拶をして、ハグやらを行ってる様子を遠目にエドワードと見ていた。
「君は、いいの?」
「拙者は、大丈夫でござる」
「そう」
少し寂し気な気もするが、二人とそんなに会話もしていないんだろうと、気にしないことにした。
「じゃ、りぃちゃん。
また、後でね!」
「ナナねぇ、ヒビキを
よろしくお願いします」
「うんうん
あのりぃちゃんが、男のために頭を下げるなんて、
感慨深いものがあるわ」
「もう!ナナねぇ」
「まぁ、私に任せといて、いろんな意味で♪」
リイナの顔が怪訝な顔になったが、最後は諦めて、笑顔に戻したようだ。
「じゃ、お互い無理をしないで、
怪我をしないように、向かっていこう!」
「「「「「おーー!」」」」」
最後にみんなで円陣を組んで、声を合わせると、大きな道を二手に別れ、歩き始めた。
僕は、リイナ達の姿が見えなくなるまで確認しながら振り返ると、アンナも同じようにこちらに向かって、手を振り合っていた。
「流石に、もう見えないでござるな」
「そうね。
みんな、無事で遭えるといいわね」
「ですね。
僕たちも、怪我をしないように安全で、進んでいきましょう。
無理な討伐は、しない方向で!」
「判ったわ」
「拙者にかかれば、どんな敵でもへっちゃらでござる」
「エドワード。
橋の件もそうだけど、無謀につっこんで行っちゃ駄目だからね」
「そうよ。
次は、助けられるとは、限らないんだからね」
「はいで、ござる」
シュンとなったエドワードの肩を叩き、3人で並んで歩き始めた。
ほんの少し進むと、道には、人も獣一匹も居なく、シンと不気味な程静まっており、波の音と歩く靴の音だけしか聞こえなかった。
半時ほど進むと、緊張も無くなり、いつも通りまったりと歩いていると、遠くのほうの砂浜に巻貝が見えてきた。
「あんなところに、でかそうな貝がいますね」
「そうでござるな」
「どう見ても、まともな大きさではないよね」
「ここからで、大きさがわかるぐらいですからね。
強いというか、脅威になるんでしょうか?」
「可能性は高いわね。
出れでも、近づかなければ、戦えるんじゃないかしら。
近づきすぎなければ、
少し攻撃してみてもいいかもね」
「拙者が、様子をみてくるでござる!」
「こら!!」
エドワードがしゃべりながら、走って、向かっていくと、奴の背中に槍が投げつけられ、石突部分が背中に当たり、辺りをごろごろと転げまわった。
「いた、いたいでござる~」
「だから、勝手に動くなって言われたじゃない!」
僕は、背中を擦ってもらってるエドワードに林のほうを指さした。
「エドワード、貝の反対側の林を見てみて。
あれは、話に聞いていた、鹿の角じゃないかな」
痛さをこらえながら、顔を上げた先、何百メートルも先の林の隙間に、葉っぱとは明らかに違う茶色い立派な角が見えていた。
「ヒビキくん、林の奥から、目みたいなものが見えるわね」
「たしかに」
僕は、林の中をじぃ~と凝視すると、暗闇の中に黄色い丸いものが見えた。それは、ゆっくりと貝のほうに近づいて行った。
これまでの話を聞いていた僕は、巨大なヘラジカが壮絶な攻撃をし戦闘が始まると予想できた。




