第295話 物を受け取って出発してみよう
「じゃ、メンバー分けどうしようか?」
「私は、お布団……
ずいぶんと姉さんといなかったから、
姉さんと行くわ!」
「いま、布団とかいわなかった?」
「やだなぁ、そんなわけないじゃん、えへへ」
アンナは、リイナの腕に絡むと、顔を寄せて、ほほとほほをすり合わせた。
アドアがてくてくと僕のほうに近づきながら、
「じゃ、私は、ヒビキさんのところに……」
「だめ、アドアは私と一緒!」
アンナがもう片方の腕で、アドアのお腹に手を回し持ち上げ、アドアは手と足をばたつきながら、残念そうにしていた。
「ふふふ。
じゃ、私がヒビキ君といっしょね!
ごめんね、りぃちゃん」
「ありがとう、ナナさん」
ナナさんが横に来ると、僕の肩に両手を置いて、後ろから、リイナを見ているようだった。
「むむっ」
「じゃ、拙者は、ヒビキ殿のほうでござるな」
リイナが、むっとしているところで、エドワードが僕の腕を握ろうとしたので、手を引っ込めた。
やりとりを見ていたギルド長が僕のほうに近づいてくると、
「どうやら、班分けは、決まったようですね。
こちらを、村のギルドに渡してください」
僕とリイナに、少し大きめの魔法のバックを受付嬢が準備をしてくれていたみたいで、それぞれに渡してくれた。
「運ぶの簡単でいいですね。
これに、どのくらい入ってるんですか?」
「大体、村人たちが、豪勢に使わなければ、一週間は暮らせるだけの生活品が、入ってます」
「え、そんなに入ってるんですか。
無くさないよう気をつけます!」
僕の返答が聞こえると、二人の受付嬢がけらけらと笑いあってた。
「大丈夫ですよ、無くされても。
こちらで、他のバックに契約切り替えが容易にできますから」
「ねぇ~」
「そんなことが、できるんですね」
「当り前……
えぇ、できるんですよ、ぷっ」
二人がさらに笑いあってると、げんこつが二人の頭に降ろされ、ギルド長が止めに入った。
「「いたっ」」
「君たち、知らなかったことを笑うなんて、失礼ですよ。
それに、ヒビキ殿たちは、私たちの代わりに運んでくださるというのに!。
気分を悪くなさらないでください。
両方の村のギルドには、事前に私のほうから、伝えておきますので、
無理をなさらずに、たどり着いて下さい。
よろしくお願いします」
「「すいませんでした」」
二人の受付嬢が深々と頭を下げると、
「いいですよ、頭を上げてください。
じゃ、リイナ、出発しようか」
「判ったわ、気を付けるのよ。
私たちの合流地点は、この都市の反対側にあるジョニーロという都市よ」
「うん、わかったよ。
リイナも、無理しちゃ、駄目だからね」
「ええ、判ってるわ」
「じゃ、兄さん、気をつけてね」
「ヒビキさん、無茶しちゃだめですよ」
二人の美少女が、僕の両脇にくると、両ほっぺたにやわらかい感触がきて、顔がほころんだ。
二人が離れ、リイナと見つめあうと、リイナの顔が真っ赤になり、抱きしめてきた。
僕も細い彼女を優しく抱きしめ、やっぱりみんなの前で、恥ずかしかったので、一歩先に進めず、
そのまま離れ、ギルドから出ることにした。




