第291話 対岸に向けて出発してみよう
「アンナ、やめなさい!」
「エドワード、無理はするな!!」
リイナとペテさんの叫び越えを無視し、二人は、全力で走って跳ぶと、アンナの跳躍は、見るものを魅了し、向かい風すら高く、より高く飛ぶために吹いているように、感じる程、高々と跳ね上がり楽々と対岸の橋に舞い降りた。
エドワードは、勢いよく離陸したかと思うと、強烈な向かい風にあおられ直ぐに失速し、誰もが対岸に到着できずに、海に落ちるのが想像できた。
僕は、すぐさま魔法を唱えると隣のナナさんも槍を投げるところだった。
「風―」
「―惣龍飛翔突!」
僕が放った魔法により、斜め上方にふんわりと上がった気休め程度だったが、ナナの放った槍は、穂先とは逆の石突きから放たれ、エドワードの首筋の忍者服に絡まると勢いのまま、
対岸の鉄橋まで運び、対岸でエドワードから離れると槍は、外れたエドワードの背を超えて飛んでいこうとしていた。
ナナさんは、それを見越して投げた直後に走り始めており、割れ目のぎりぎりでジャンプをした。
さすがに、エドワードより、華麗に飛んでいたが、そのままでは、ぎりぎり届くかどうかといったところあった。
跳んでいる途中で、槍にくくりつけていた鎖を引っ張ると、その勢いを吸収し、アンナの隣にスタッと降り立ち、空中に飛んでいた槍を自分のほうに引き寄せた。
ナナさんは視線を地べたに落とすと、痛みでころがってるエドワードを哀れな目で見ていた。
「……無様ね」
僕は、ナナさんが無事に到着できたことで、肩の力が抜け、息を吐くと、リイナとアドアのほうを見た。
「僕らは、どうやってあっちに行こうか」
「そうねぇ」
「こまってますか?」
そんな僕の思案中に一人の美女?、蛇の亜人が声をかけてきた。
「あなたは?」
「マミヤさん!」
「この前は、ありがとうございました」
リイナが、マミヤさんと呼ばれた女性と手を取って懐かしがってるのを眺めていたら、後ろに子供が隠れていて、僕と目が合うとまた隠れた。
「マミヤさん、どうにかできるの?」
「私が渡るんので、背中を通って、対岸に行って下さいね」
彼女が言い終わると、体長20メートルくらいの大蛇に変わり、橋の端へ行くと体で橋に巻き付いた。
「ありがとう、マミヤさん。
移動させてもらうわ」
リイナが、対岸にいるマミヤさんに呟いたが、距離があるので、流石に聞こえていないだろうと思った。呟き終わると、ゆっくりと背中を歩きだした。高所ということもあり、強風であおられながらも、うまくバランスをとって、ゆっくりと確実に前に向かって行った。
僕は、ペテさんのほうに振り向くと
「後の修理や報告は、ペテさん、よろしくお願します」
「判りました。
ヒビキ殿も気を付けてください。
それに、エドワードのこと、よろしくお願いします」
「わかりました」
僕は、ペテさんが深々と頭を下げると、頭をあげさせ、両手を握った。
ペテさんは、負けず嫌いがでたのか、同じくらいの力で再度握って両手が悲鳴を上げていた。




