第290話 鉄橋の様子を見に行ってみよう
僕は、終点に気づくかずに寝ている右往左往している人影がみえ、目が覚めた。兵長らしき人が起こせずに、魔馬車の周りを歩き、思案し、困っていた。
「みんな、付いたみたいだよ」
僕の隣で、よだれを垂らしながら寝ているアドアを起こすと、失態に気づき、顔が真っ赤にしながら俯いていた。
そんな楽しげな様子を観察する人はいず、みんなが続々に起きるなか、入口のアンナが邪魔で降りるに降りれなかった。
だが、リイナを布団にしていたアンナだけが、まだ夢の中のようだ。
「アンナ、起きなさい」
「むにゃ」
リイナは、まだ、力の入らないアンナに肩を貸して、魔馬車がおり始めると、ようやく全員が降りることができるようになった。
「こちらです」
魔馬車から降りると、建物の中なせいか、薄暗かった。正面の扉を兵長が開けると、隣の部屋は、外からの明かりに照らされ、まぶしくて、目を開け続けることができず、目を細め、何度か瞬きせざずにはいられなかった。
「う~ん、まぶしいね」
「そうね。
本当に、ここは、セユクーゲなのね、あそこの通りに見覚えがあるわ」
「拙者は、初めてでござる」
気が付くと、僕の両脇にナナさんとエドワードが、目を細めながら、窓から見える風景を興味深々で見ていた。
「さぁ、行きましょう」
ペテさんが、ドアを開けると、扉の前にいた兵士が、声をかけて挨拶をしてくれた。
「いってらっしゃいませ」
僕らは、ナナとリイナの誘導のもと、建物よりも高く、遠目からでも見える、大橋に向かって歩き始めた。
「おきた?」
「ふぁぇえ
よくねむれました。むにゃむにゃ」
アンナに近づき話してみたが、時折目を瞑り、歩きながら眠っているのか、ふらふらしながら進んでいると、見かねたアドアが手を繋いで歩き始めた。
勢いよくでた、ペテさんだったが、僕とエドワードと同様に、後方で三人揃って、歩いていた。僕らは、あたりをきょろきょろしながら、見慣れない風景を楽しんでいた。
「あれだよね、大橋」
「きっと、そうでござるな」
「破壊されたっていうわりには、
原形がありますね」
ペテさんが指さした先の大きな鉄橋は、大陸に繋がっているようにみえた。
兵士からの報告からは、原形をとどめないぐらいかと思ってたんだけど、そうではないようだ。
橋に近づくと、橋の入口ではドワーフの兵士たち数名が、入り口を閉鎖していた。
「お疲れ様。中を通してくれ」
「お疲れでござる」
入口で止められていたナナとリイナを追い越し、ペテさんとエドワードが声をかけると、兵士たちは、安堵の表情にかわり、にこやかに通してくれた。
「お疲れ様です。
どうぞ、お進みください」
兵長と思われる人が僕らと一緒に歩き始める数メートルを進むと、入り口の閉鎖の隊列がくずれたことで、人々が雪崩のように、ぞろぞろと付いてきた。
「すみません
僕らが向かったことで、ご迷惑を……」
「しかたないですよ。
彼らは、どうなってるか見たいだけなので、
一目みれば、そのまま帰っていくでしょう」
兵長の予想通り、ほとんどの村人は、鉄橋の損壊具合をみて飽きると一人、また一人と去って行った。
僕らは、鉄橋の壊れたところまで、ゆっくりと近づくと、5メートルほどの幅の橋の中央が、同じくらいの距離で、二つに分かれていた。
「思ってたより、早く修繕できそうだ」
ペテさんが、恐る恐るのぞき込むと、兵長に声をかけた。
「技師たちは、いつこれそうなんだ?」
「昨日から、連絡しましたので、3日後くらいには、到着できるかと」
「ふむ、今から王都にもどれば、
もっと早く到着できるかもしれないな」
ペテさんが思案をしている横で、能天気な声が聞こえてきた。
「あの位なら、渡れるかも、兄さん」
「そ、そうでござるな」
僕の心配をよそに二人は、割れ目に向かって走り始めていた。




