第29話 辛いときは感情を表にだしてみよう
〈だめだ〉
〈そうね、だめね〉
僕は、途方にくれていた。
リイナも同じ感想のようだ。
教会に入ると、シスターから露骨に、
いやそうな顔をされた。
むしろ、バザーの露店と宿屋の方が、
よかったぐらいに。
それでも、僕は食い下がった
「泊る場所がないんです」
「ここは、宿屋じゃありませんから、
宿屋にいってください」
「食べるものを売ってもらえないんです」
「ここは、商店ではありませんので、
商店にいってください」
「何か、手助けをしてもらえませんか」
「神にいのってください、
他の場所で!」
食い下がらなければよかったと、
感じた。
怒気をつよめて、シスターと言い争いを行ったせいか、
別のシスターさんが出てきた。
僕をみるなり、
「あなたも、ここは神を崇めるところで、
言い争う場所じゃないんです。
他の場所に早く出て行ってください」
「はい、すみませんでした」
どうやら、助けてくれると期待した
僕は、浅はかだった。
とぼとぼと道を歩いていると、
買い物袋をもったシスターさんが、
歩いてきた。
「どうされました?
困っていることがあれば、私が話をききますよ」
シスターさんが、困っている僕を見かねて声をかけてくれた。
この町にはいって、初めての優しい言葉に、
涙がでてきた。
「うぅ」
「泣かないでいいですから、
教会で話をききましょう」
優しい声で、話しかけてくれるシスターさんは、きっといい人だ。
「うぅ、教会に相談にいったら、
話を聞いてもらえずに、
追い出されたんです」
僕は、涙を流しながら、
シスターさんの胸で泣いていた。
「なるほど。
だいたい、判りました。私の友人にも、
嫌悪もちの方がいて、同じような扱いをされて苦しんでました。
いつもやさしいシスターたちがそんな態度をとるには、
何か理由があると思うのです。
きっと、あなたも、嫌悪もちなんでしょう。
思い当たるふしはありますか?」
「まったく、わかりません」
シスターさんの優しさに、
僕の涙は、とまらなかった。
「あんまりなくと、かわいい顔が台無しですよ」
考えれば、リイナのカラダだった。
その横で、リイナももらい泣きしていた。




