第283話 男泣きをみてみよう
期待通りの回答をしてほしいと顔に書いてありそうな王様に顔を向けた。
「王様は、花火を知ってますか?」
「花火とは?」
「隣の大陸では、祝い事の際に、夜空を奏でるようです」
「で、それと、ヒビキ殿の願いに関連するのか?」
「はい。
発破で使う火薬一樽を僕に譲ってほしいんです
隣の大陸で花火に使いたいんです」
「そんなことでいいのか?」
「はい。
一つ提案なんですが、
今、火薬に精通している二人を、大陸に派遣させてほしいんです。
そうすれば、大陸から技術を習得できるはずです」
大臣が一歩前にでると話に割り込んできた。
「大陸がそんな貴重な技術を教えてくれるとは、思えないですが……」
僕は、自信満々に返答した。
「大丈夫です。僕からの依頼ということであれば、都市で3人の教会上層部が動いてくれます。
これが、書状です。
リイナは話を聞くと、以前にクロムさんやオリビアさんが持たせてくれた書状をバックからとりだした。
「ありがとう、リイナ。
話をしてくれれば、聞いてくれるはずです」
リイナが渡すと同時に補足説明を買って出てくれた。
「というのも、以前にバジリスクを討伐する際に、
次回使う花火用の火薬を使ってしまって、町の人たちが寂しがってるみたいなの」
「と、ところで、
話を遮って悪いのじゃが、
ヒビキ殿が、、二人っていうと、あのダンジョンの?」
オオストラトさんは、僕の意図を理解したようだ。
「そう、姫への罰でダンジョンにいる彼らです。
エレメール、二人を許してあげてほしいんだ」
「むぅ、ヒビキがいうなら、許してあげる、なの」
「ありがとう、エレメール」
「ありがとう、ありがとう、
ヒビキ殿」
オオストラトさんは、自分のことのように喜んでいる。
「では、ヒビキ殿のために、火薬を一樽、融通し、
二人の火薬技師を提供してほしいということだな。
それによって、我が国にはいずれ花火の技術が持たされ、
相手の都市も、我が都市の民も喜ぶということか」
「そうです、いかがでしょうか?」
「いいも、悪いも、褒美になっていない気がするな。
ヒビキ殿は、本当にそれで、いいのか?」
「ええ、僕は、それで、大満足です」
僕からしてみれば、水上都市ハインテに火薬樽が届いて、出入り禁止が帳消になればいいだけなんだけど、
そのためにも、もう一つの案を通すだけだ。
「王様、わしが伝令にいってもよいでしょうか?」
オオストラトさんが、ダンジョンの奥にいる二人の伝令役を買ってくれるようだ。
「うむ、わかった。
やつとお前は同期で同郷だったな。
許そう。よろしく頼む」
王様は、一呼吸置くと、真面目な顔で、オオストラトさんを見つめた。
「ながらく、姫の補佐、ご苦労だった。
近衛隊長の任は解こう。
ゆっくりと、旅に行き見聞を広めてくれ。
また、帰ってきたら、仕えるのだぞ」
「は、ありがたきしあ……」
王様は、膝をつきオオストラトさんの両手を握った後、肩に手をおくと、
オオストラトさんは、男泣きし始め最後まで語ることができなかった。
僕は、そんな様子を眺めながらモモの方に振り向いた。
「で、モモ、オオストラトさんたちを水上都市ハインテまで、
連れてってほしいんだ」
「え、わたし?」
「うん。
そうすれば、ギルドの仕事で遅くまで、働かなくてすむだろうし、
ムラサキさんやみかんちゃんに会うことができるでしょ」
「そうね、
うん、確かにそれも、いいかもね。
久しぶりに二人に会いたいし、
それに、ヒビキの頼みだしね!
まかせて、頂戴」
僕は、モモから大臣のほうに向きなおすと、
「王城からギルドに公用として、だしてもらえますか?」
「わかりました」
大臣が満足げに返答した。
「では、モモ殿いきますのじゃ」
「えっ、もう!!
まだ、気持ちが……
それに、ヒビキとの別れのキスが……」
「そんなのないから!!!!」
リイナが、モモに舌をだして、見送ると、オオストラトさんは、モモの腕を掴んで、嬉しそうに王宮の間を走って出ていった。




