第282話 何でもいいというのは、決定事項があることを知ろう
僕らは、王様の前に一列に並ばされると、王座には、エレメール姫が王様の隣に立って、楽し気に微笑んでいた。
僕は、姫様をじぃっと魅入っていると、
「こほん」
王様の隣の大臣が咳ばらいを行い、ようやく事態に気づき、王様のほうに視線を移し替えた。
「さて、この度は、賊による襲撃を退けてもらい、
大変助かりました。
モーリス王は、功績を高く評価され、些少ではございますが、皆さま方に、金貨100枚と王家のネックレスを授与致します」
リイナ、モモ、ナナさんの前に、従者がやってくると、王様が受け取り、それぞれに、授与品が渡され恭しく受け取っていった。
「「「ありがとうございます」」」
三人は、それぞれ受け取ると、頭をさげ、お礼の挨拶を返していった。
全員に、授与品が受け渡されると、王様はいったん王座に戻り、一呼吸おくと、大臣が一歩前にでた。
「アンドレア様、また、従者のアンナ様につきましては、教会に贈呈となります。
私のほうで、お二方様に個別に送られるように、お話をさせていただきますので、
後日、お受け取り下さい」
「はい、判りました」
アンドレアが頭を下げると、隣にいたアンナも慌てて、同様に、頭を下げた。
「オオストラト、ペテ、エドワードについては、
金貨10枚と装備の贈呈が、後日、直属の上長から渡されます。
謹んで受け取るように」
「は、ありがとうございます」
三人が、しゃがみ、片膝をたてて、頭をさげた。
「では、王様」
王様が立ち上がり一歩前に立ち上がり、語り始めた。
「この度、賊の頭目であった、ハヤテの討伐。
エレメール姫の成人の儀式の補佐。
また、その時に、我が国に客人として、来ていただいた
アンドレア殿とアンナ殿の命を救った件から、
大臣たちと協議し、最大限の報酬をご提示させていただくことで、まとまった。
だがだ、報酬としての物が、数日、深夜まで、決めきれなかった。
そこで、どんな願い事でも、叶えられるよう国を挙げて、善処することにし、
ヒビキ殿の願いを聞いてみるということになった」
「へっ」
僕が、茫然としていると、王様から、いくつかの魅力的な提案がでてきた。
「金貨1000枚でも、
この王城が欲しいでも、なんでもよいぞ。
エレメールが欲しいでも、よいぞ。
二人仲良く、治めてくれるでも構わないぞ。
エレメールじゃ、不満か?」
「ぶっ!!」
思わず、思いがけない提案で、王匡の間にらしからぬ吹き出しをしてしまった。
「ふ、ふ、ふ、不満とか……」
「じゃ、決定でいいんだな」
僕は、隣を見渡すと、エレメール以外の女性全員の目が恐ろしい目で僕を見ており、僕をやさしく見てくれているのは、正面で照れている美少女だけだった。
「ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか。
す、少し、ほんの少しだけでかまいませんので、考えさせて下さい!」
「そうか。エレメールじゃ即答は無理か」
「そっ、そっ、そっ、そういうわ……」
いいかけて、隣を見ると殺気立っているリイナの視線が怖くて、顔を向けることすらできなかった。
「ヒビキ殿は、あの魔王討伐のハン殿や隣の大陸の魔王 バートの二人を、同時に屈服させるほどの器量 の持ち主だからな。
きっと、いい知恵者となり、統治をしてくれるだろうと期待している」
「そんなことまで、知ってるんですか!!」
「王様だからな、情報が一番大事だよ。
で、覚悟は、決まったのかな?」
優し気に語りかけてくるが、目は笑っておらず、じりじりと押し込んでくるのは、交渉術なんだろうか。
「も、もうちょっとだけ……」
「じゃ、あと少しだけだ」
にやにやしながら決定事項のように決めつけてくるモーリス王を考えないように、目を瞑って冷静に過去で後悔したことを思いだしていると、一つに事案が思い浮かべ、目を開けると、モモと目があった。
「決めました!」
僕の中での、点と点が繋がり、一つの妙案が出てきた。
僕の思い通りにいけば、僕を含めて幾人もの人間が、助かるに違いなかった。




