第281話 美少女の晴れ姿を眺めてみよう
オオストラトさんに連れられ、王宮の間と思わしき仰々しい部屋に通され、言われたとおりの場所に鎮座した。
王宮の間には、何十人もの兵士や従者などがいて、その中には、ペテさんや、エドワードさんの姿も見えた。部屋の中は、静かなものだったので、目線があっても、お互いに会釈をするだけに留まった。
長い時間に感じられたが、実際には、半時も立たずに、モーリス王が偉そうな人達をお供に引き連れ、王座に座ると、厳かな雰囲気が、より一層静まった。だが、座った瞬間に大臣が目配せすると、高らかにファンファーレが部屋中に響き渡り、従者を引き連れて、エレメール姫が入城してきた。
いつもの服装と大きく違わないように見えたが、両肩には、王家の紋章がはいっており、正式なものなんではないかと推測できた。
ダンジョンでは、化粧などはしてなかったが、今日は、目元など全体に薄く化粧が施されており、
人形のような整った顔立ちが、一際、美しさが増していて、目線を外すことができなかった。
ほんとに、あんなに綺麗になるんだな。
見惚れていると、エレメール姫と目が合った気になったが、彼女は直ぐに正面の王様に目線を戻し、ゆっくりと、王様に向かって歩いていた。やがて、王様の手前までたどり着くと、跪ずき、頭を下げた。
その様子を満足げに大臣がうなづくと、手に持っていた、ロールを開き、書かれた文面を読み始めた。
「エレメール姫、お顔をあげてください」
エレメール姫は、声を聴くと、頭を上げ瞑っていた瞳をあけ、王様達を見上げた。
「この度、成人の儀式として行った、『3大迷宮個人討伐』に挑み、
見事無事達成し、成就した証として、王家引継ぎの栄誉を授与されるに至りました。
よって、その証として、王家に伝わる冠を授与いたします」
「はい、謹んで御受けいたします」
王様は、姫様に近づき、隣にいた別の大臣が大事そうにもっていた王冠を、姫様の頭にのせた。
王様がつけていたものより小ぶりだったが、デザインは同じように見えた。
王様の授与が終わると、エレメールの手をとり二人で王座に並んで、こちらに向いた。
「本日より、このエレメールは、私の代理として、
王の執政を行う権利を有した。
明日より、私の代行を担うと共に、皆と一緒に。この国の発展と平和に努め、
精進していくこととなる。
皆の者、私同様、エレメールを支えてやってほしい」
王様と姫が同時に頭を下げると、広間にいた全員が、盛大な拍手と喝采を行い、部屋中に鳴り響いた。
「皆の者、お静かに!
以上を持ちまして、エレメール姫の戴冠式を閉幕します」
大臣の一声で、会は終了し、三々五々、自分の仕事に戻るため、去って行った。
しばらくすると、閉幕を唱えた大臣が僕たちの元にやってきた。
「この後、ヒビキ殿たちを称えるための会を行います。
もう少し程待って下さい。
急ぎ、準備をしておりますので。」
「わかりました」
僕は、アンナやアドアと一緒に、王様の隣にいたエレメールのもとにゆっくりと向かった。
「エレメール姫、おめでとう」
「ありがとう、なの
これも、ヒビキのおかげ、なの」
「僕の力なんか、ほとんどいらなかったけどね」
「ヒビキさんが、いなかったら、私たちどうなってたか」
「ねぇ、兄さんがいなかったら、スライムの中とか、
想像したくないよね」
「ヒビキ殿、娘を補佐してくれて、ありがとう。
それに、王宮の奪還も協力してくれて、感謝しかないな」
いつの間にか、エレメール姫の後ろにいた王様が、話終わると、頭をさげた。
「王様、頭をあげてください。
僕は、やれることをやっただけですから。
気にしないで下さい」
「この後も、エレメールを助けてやってほしい」
「はい、できることがあれば何でも」
王様は、満足げにうなずくと、大臣がやってきて耳打ちされると、王座に戻り座った。
大臣がこちらに近づくと
「では、ヒビキ様御一行、王様の前に一列で並んでください」
僕は、辺りを見回すと、オオストラトさんやエドワードさんなど、顔なじみの面々がリラックスした面持ちでこちらを見ていた。彼らが、僕たちに配慮して、人数を絞ってくれたんだと理解した。
大人数の前、功績を称えられるとか、はずかしいよね。




