第280話 王城に向かってみよう
騒動から二日後、僕は、直ぐにリイナとアンナと共に出発したかったのだが、
アドアの回復魔法での仕事が残っていたため、アンナと一緒に留まっていた。
「今日の夜には、アドアの回復も終わるみたいよ」
「ようやくだね」
僕とリイナとナナさんで、王都を回りながら、観光に勤しんでいた。
モモも一緒に行きたがっていたが、ギルド内もごたごたしており、ヘルプに駆り出され、
毎日、深夜まで帰って来なかった。
あの時以外、二人っきりになることもなく、常に誰かと一緒だった。
リイナと目が合うと照れはじめ、どぎまぎすると、ナナに揶揄われ、変な汗が流れた。
夕方になると、アンナとアドアが戻ってきて、近くの酒場で食事になった。
「明日、王城で、姫様の戴冠式があるから、みんなで出てほしいって、いってたよ。
姉さん」
「その後、ヒビキさんに、討伐報酬が授与されるみたいですよ。
期待していいって、オオストラトさんがいってましたよ」
「私たちには、ないの?」
「私やアンナには、仕事で来ていたので、ないみたいですが、
ほかの皆さんにも、金一封や魔法アイテムの授与があるみたいですよ」
「やったね」
「それは、楽しみだね」
「じゃ、明日、朝一で起こして回りますから、
今日は、早めに解散にしましょう!」
「「「は~い」」」
といいながらも、話題はつきず、二刻ほどだらだらとし、そろそろ解散というところで、ピンク髪の可愛らしい女性がはいってきた。
「つかれた~」
「お疲れ、モモ。
毎日、大変だね」
「そうなのよ、ヒビキ
実わね……」
モモの飲食を追加注文し、みんなで乾杯すると、結局、深夜まで、グチを聞くことになり、
いつもどおり、解散は日が変わった後だった。
「おはようございます」
アドアが元気よく、大部屋の広間に入って、挨拶をすると、僕やリイナ、ナナさん、酒に強いモモも普段と変わらなかったが、アンナだけが頭をかかえ、辛そうにしてた。
そういや、アドアは、ちゃんとお酒をセーブして飲んでたっけ。
宿をでて、王城に向けてアドアが、楽し気にスキップしながら、先導し始めたので、隣に並んで歩くと、僕の手を握ってきた。
「アドアも、モモも毎日大変だね」
「ようやく、依頼も終わりましたので、これで自由です。
ヒビキさんは、この後、どうするんですか?」
「リイナと一緒に、アンナを連れて、
パトリシアさんのもとに、戻ろうかと思うよ」
「へぇ、じゃぁ、私も一緒に付いて行きます」
「じゃ、これが、終わったら、向かおうね」
僕はアドアと顔を見合わせ、笑い合うと、城の門の兵士が挨拶してきた。
「みなさん、お待ちしておりました。
オオストラト近衛騎士長が、この先で待っておりますので、
お進みください」
僕らは、彼の誘導にしたがい、奥に進んでいった。
オオストラトさんって、肩書があったんだ。ああ見えて偉かったんだな。
「おお、ヒビキ殿、待っておりましたのじゃ」
「オオストラトさん、久しぶりです。
って、言っても、三日ぶりくらいですけど」
オオストラトさんは、王家の紋章をしたためた、白銀の鎧を着ており、
威厳が増し、かっこよかったが、髪の毛やひげは、いつもどおり、ライオンのようだった。




