第276話 間話 ヒビキ離脱 5日目
リイナは、朝ゆっくりと起きると、ジュシアは、既に起き部屋に居なかった。
ジュシアがいなかったため、パトリシアに連絡をすることにした。
「ママ、どう?」
「生まれるのは、もう少し先ね」
「わかったわ、安静にね」
パトリシアは、出産間近のため、家族集合をさせるため、アンナを呼びに行かせたのだ。
「で、ヒビキは?」
「昨日、シュンセルに到着したって、言ってたわね。
あと二日もあれば、先に王都に到着するわね」
「わたしは、昨日、ジュシアおばさんと一緒だったわ」
「あ、彼女は、モンテリンクだったものね。
ジュウベエにも言っとくわ、よろしく伝えといてね」
その後も、ヒビキの話で盛り上がっていると、部屋の主が戻ってきた。
3人で、いろんな話をしていると、そろそろ城門が開く時間の鐘が城中に響いた。
「そろそろ出発できるわよ、リイナちゃん。
みんなに挨拶しにいきましょう」
「はい、おば様。
じゃ、ママ、また後で」
ジュシアについて、入り組んだ城の中を縫うように進むと、食事に向けて待ち合わせ中だった二人が揃って、ストーン家と談笑していた。彼女らの服装や化粧が、昨日とは違っており、また、別人のような印象をリイナは感じた、そんな二人は、昨日の晩餐会や舞踏会、朝の談話などのイベントを経て、ストーン家と親密が増していった。
「ユカリねぇ、ナナねぇ。
わたしは、明日この町をでて、王都に向かうことにするわ。
門が閉まる前にでないと、いけないから、
もう、この城をでて、明日の準備をすることにするわ」
「そうなの、残念ね」
「元気でね、またね!!」
「うん、二人とも、楽しんでね
じゃぁ」
リイナは、二人の女冒険者と抱き合って別れたかったが、服を傷めそうなので、手を握るだけで、別れの挨拶を終わりにした。
奈々とジュシアは、部屋の入口まで見送ると、リイナからは、ここで大丈夫だからとその場を後にした。
奈々が、振り返ってジョルジュと仲良く楽しそうに話している由香里をみて、自分は彼女ほど彼を好きになっていない、この生活は私には窮屈だと感じると、身を引くことにした。
静かに、由香里に近づくと
「リイちゃんが、心配だから、
やっぱり、彼女についていくことにするわ
じゃ、ユカリ……幸せになってね!」
「えっ!」
由香里は、何で声をかけていいかわからず頭が真っ白になったが、
長い別れで、涙でくしゃくしゃになった顔をみせたくなかった奈々は、ジョルジュに一言いうと、部屋からそそくさと出ていった。
泣きながらの別れだけはすまいと思いながらも、これまでの出会いを思い出し、目に涙を浮かんできたが、
リイナを見かけると、涙を一筋だけ流し、笑顔にすることにした。
ゆっくり歩いているリイナに、駆け足で追いかけると、橋の途中で追いつくことができた。
「リィちゃん、待って、
一緒に行くわ」
「ナナねぇ、よかったの?」
「いいのよ。私には縁がなかっただけよ」
「そ、そう、残念だね。
でも、ありがとう……
今日は、酒場でいっぱい飲みましょう!」
「いいわね」
場違いな服を着た奈々は、街中で目立ちまくりだったが、美しさが際立ち過ぎたこともあり、
羨望の眼差しとため息で、近づいてくるものはいなかった。
魔馬車の近くの宿をとると、服を着替え、夕方前から近くの酒場で酒をあおり、
一緒にいた由香里の失敗談を肴に、泣いたり笑ったり、怒ったりしながら夜更けまで語り合った。




