第274話 間話 ヒビキ離脱 4日目(昼)
彼が酔いつぶれて、近めのホテルに各々で泊まった。
朝を迎え、酔うなんて程遠い三人組は、早々に、朝日が昇るとホテル前に集合できたが、ニューイシは、ベッドの中でぐったりだった。
会計をリイナがしているうちに、由香里と奈々(ナナ)が彼の部屋のベッドから、両脇を抱えながら、連れてきた。
まだ、昨日の酒が残っている彼は、ゆさゆさした揺れで、より一層二日気持ち悪さが増していったが、彼女らは無視して、魔馬車の乗り合い地点まで、移動した。
「今日も余裕そうね」
「ですね、じゃ、お金払ってきます」
リイナは由香里に返答をすると、御者にお金を4人分払い、一番後ろに陣取った。
この都市では、魔馬車が全員、埋まることは稀だった。リイナが乗った魔馬車の行先は、独立国家 モンテリンク行きで、この大陸の中で乗っている時間が一番短く、歩いていけば夕方には到着できた。普通の冒険者であれば、お金がもったいないと思い使わないが、彼女らは、知らずに贅沢をしているのだった。
そんなこととは、つゆ知らず、早々にリイナは端っこに座ると、うたたねを始めた。同じように体調の悪い彼も、真ん中付近に深く椅子に座った。彼の両脇には、二人の美女が体を預けたが、気にせず目をつむり、体調の回復するのを祈った。
時間がくると魔馬車は出発し、彼らをつれ、ナルコル村を通過し昼時が過ぎ、小一時間ほど経つ頃、本日の予定のモンテリンクに到着をした。
独立国家 モンテリンクは、大陸で一番の商業都市であり、多数の繁華街が賑わっていた。王都 ベーオーンによる魔王での統治を離れ、最大の商業都市ゆえに、貴族ストーン家による統治が認められていた。陸地に隣接した人工島に建造されているホワイトストーン城は、魔王城よりも広く高く真っ白な石で作られ、旅人も泊まることができることで更に人気がでていた。
魔馬車をおりた先の第一商業地は活気で満ちており、どこを通っても変わったアイテムが置いてあり、呼び声が高らかに聞こえてきた。
「すごい活気だね」
「ここは、いつもそうだよ」
ニューイシは、だいぶ酔いがとれ先頭にたって、道を進みながら、ガイドを始めると、二人の美女は、羨望の眼差しで見始めた。
「この噴水を右にみると、ストーン城だよ」
「真っ白で、綺麗ね」
「こっから見るだけでも大きいのがわかるわね」
二人がニューイシと会話をしていると、彼は、意を決したらしく、二人に話しかけた。
「私は、ニューイシじゃないんだ。ほんとは、ジョルジュ・ストーン。
あの城の皇太子なんだ」
「えー」
「ほんとに!」
「とりあえず、二人にきてほしい!」
ジョルジュは、二人の手を握ると、まっすぐに城まで通じる道を歩き始めた。
のけ者のリイナは、遅れまいとゆっくりと距離が離れないぐらいの速度で付いて行った。
「二人に、私の親を紹介したい。
きてくれるよね?」
有無を言わせない口調に、二人は顔を見合わせたが、行ってみたい欲望に変えられず、笑いあうと付いていくことにした。
三人は、他の冒険者や町の人たちに紛れ一刻ほど進むと、ようやく、巨大な城の門が見えてきた。
門が開いている時間は、昼前から夕方ぎりぎりまでとなっており、それを過ぎると入城も退城もできなくなってしまう。城の中にも、一般向けに泊まれる場所以外にも、商店や飲食街が広がり、時間をつぶせる場所は無数に存在した。
「帰ってきた」
ジュルジュが帽子を外し、門番に挨拶をすると、辺りは騒然とし、門番は城中に聞こえる程の大きな声で、帰宅を伝えた。
「皇太子様のお帰りです!!!!」
二人は改めて、凄いところに来たなと顔で申し合わせると、後ろに、ぴったりと付いて行った。
「二人は……
いや、三人は、私の客人だ。
そのように、扱うように」
「「「「「「は」」」」」」
あっという間に、10人以上の衛兵が現れ、その中でも一番偉い部門長が、てきぱきと指示し、女性の従者に目配せをした。
「では、みなさん、服を着替えたら、後で会いましょう」
ジュルジュが深々と3人に一礼すると、他の従者は一歩下がって同じように三人に、頭を下げた。
挨拶が終わると、3人は、各々が違う従者に連れられ、違う更衣室に連れていかれた。20畳以上もある部屋に数人の従者がリイナや由香里や奈々(ナナ)に会う服装をこれでもかいうほど衣装合わせを行いながら、髪型や化粧などをセッティングしていった。
「お綺麗ですよ」
「お似合いですよ」
各々従者が、一番城主が好きそうな服装に着替えさせると、同一のタイミングで、対面の場の控室に連れていかれた。
「きれい」
三人が三人とも、薄化粧で最大限に美しさが増しながらも、それぞれに違う美しさが際立った。由香里は、赤毛を基調に大きな目がさらに印象深くかわいさも際立ち、奈々(ナナ)は細長の眼に黒髪をあげ、アイシャドーが妖艶さが増した。リイナは、髪を後ろで固められ、整った顔立ちを対となすように、チークを少し足して、可愛らしさが増すzとコントラストで、誰からも評価された。
「城主様、ジョルジュ様がお待ちになっております。
お入りください」
執事が三人に、入城を促すと、階段をハイヒールでゆっくりと昇ると、それにつれて、大きな扉が開いていった。
「ご来賓、ご入場です!」
入口にいた衛兵が、ハリのある声で中の人に伝えた。先ほどまで、ざわざわとしていた部屋がシンと静まり返った。
中には、城主、奥方、ジュルジュ、衛兵に叔母など、血族が奥におり、周りに衛兵や大臣たちが、三人を品定めしながら、見守っていた。
ジュルジュも皇太子らしいシャンとした服装に着替え、先ほどよりも、威厳が感じられながらも、二人の城主を控えめに抑えていた。
先頭を歩いていた執事が、城主の手前まで歩くと、横にずれて、自己紹介を促した。
「モガミ ユカリと申します」
「ササゲ ナナといいます」
「リイナです」
まったく、興味がないリイナがそっけなく答えると、城主のとなりにいたジュルジュの叔母が声をかけた。
「あら、リイナちゃん、久しぶり」
「叔母様、お久しぶりです。
八年ぶりですね」
「私の部屋にいきましょう」
リイナは、叔母さんに近づくと話始め、二人は、全員が唖然としている中空気を読まずに、別室に向かっていった。
ジョルジュは、リイナのことは初めから興味がなかったため、美女二人と両親を交え、食事に招待し、この後、これまでにみたことのないような、料理が提供された。




