第272話 間話 ヒビキ離脱 3日目(昼)
「作戦、どうする?」
「いつも通りね」
何も考えない、出たとこ勝負のことだが、話をしてるだけで、三人は、リラックスすることができた。
木々を抜けると、小高い高原が見え、乱雑に100名ほどのゴブリン達がだらだらと進んでいた。
先頭の真ん中付近に、棒にくくらされ担がれている、子供と軽装な服装の冒険者を発見することができた。
由香里と奈々(ナナ)が彼らに向かって、叫んだ。
「ほら、そこのゴブリン共、二人を置いて、今すぐ去れ!」
「そうすれば、命だけは、助けてあげるわ!」
「ごろす!」
「ウギョアッーー!」
ゴブリン達は、その場に二人をおいて、各々が奇妙な言葉を叫びながら、4人を目標に走り始めた。
ビシッと人差し指を由香里と奈々(ナナ)に向けて、ポージングすると、
「さて、二人にわたしの本当の力を見せてあげる時がようやくきたわ!」
リイナは、魔法本を取り出し土魔法のページを開くと、最大魔法を唱えることにした。
「うなれ!
泥積縁土石流!!」
ゴブリンの一番後ろに300メートル級の大魔法陣が光り輝くと、魔法陣内の土が徐々に盛り上がり、20メートルほど真上までくると、太陽を隠し彼らは影に隠れた。徐々に、覆いかぶるようにゴブリン達の上を進むと、下にいたゴブリンが何事かと足を止め、上空を見上げた。
あっという間に全てを覆い、ゆっくりとリイナ達の手前まで、飲み込まんかと覆いかぶり、全員が太陽がみえなくなるのを確認すると、リイナは、右手を真上にあげ、冒険者と少年にむけて、振り下ろした。
「断裂!!!」
振り下ろした一列の直線状だけ、上空の土が左右に割れ、覆いかぶらず、上から見ると、1メートルの幅の道を掘り進んだように見えた。
二匹のゴブリンが生き残り、リイナたちに向かって全力でやってくるのがわかると、先ほどまで唖然としていた二人の美女が各々の技を繰り出した。
「炎虎爆撃斬!」
由香里が右手にもったファルシオンを、振りかぶると右手に力を籠め血管が浮き上がると、いつもの倍ほどに膨れ上がり、剣を投げつけた。投げつけられたファルシオンは高速で縦回転し、ゴブリンの頭を爆散させつき進み、冒険者の頭の隣に突き刺さった。
「ヒィ!」
冒険者は、恐怖で顔をこわばらせた。
「惣龍飛翔突!」
奈々(ナナ)は、右手で投げやりのように槍を持つと、後ろまで引き、前宙しながら、回転をかけてゴブリンに投げつけた。螺旋回転しながら投げつけられた槍は、ゴブリンの胸に巨大な穴があき、奥にいた冒険者の脇に深々と突き刺さった。
「ヒィ!」
両顔付近に深々と武器が突き刺さり、二度目の恐怖でゴブリンに捕まった時以上に、精神をすり減らした。
「すっごい強くなったね、リィちゃん」
「昔、聞いてたとおりだったんだねぇ~。私は信じてたわよ」
3人は、土で盛り上がっていないところを、ゆっくりと歩きながら、向かっていった。
ラミアは、敵がいなくなったのが判ると、急いで、息子のもとに走って向かっていった。
「ポポ、ポポ、大丈夫?」
「ママ、ママっ」
息子の名前を呼びながら、ラミアは、直ぐに到着し、息子の紐を解くと、二人は、抱き合った。
三人は、二人の幸せそうな顔を満足げに浮かべると、冒険者のもとに行き、紐を解いてあげた。
冒険者は、金髪の優男で、冒険者にしては、体の線が細かった。
ヒビキよりも痩せてるかしらとリイナは比べていたが、二人の美女は、違った事を考えていた。
各々の武器を拾いしまうと、片手づつ、冒険者の前に、手をだし、立つように促した。
「「大丈夫ですか♪」」
「ハ、ハイ」
先ほどまで、ゆっくりと近づいてきたときと、声のトーンが違うなと感じながらも、助けてくれたことに感謝の言葉を述べた。
「助けてくれてありがとうございます。
私は、ニューイシといいます」
「助けに向かったのに、助けられて申し訳ない気持ちでいっぱいです」
ニューイシは、二人の冒険者に起こしてもらい、直ぐにラミアのもとに走り、頭を下げた。
「いえ、ありがとう」
ラミアは、助けに行って貰ったことに感謝しており、嬉しかったので、子供から離れると、彼に目を合わせ、両手を握り、その後、優しく抱きついた。彼は、抱きしめられると、豊満で柔らかな胸の感触で、ニヤつき、2人の冒険者から、冷たい視線が送られてることには、気づかなかった。
ラミアが、ゆっくりと離れ、深々と一礼してから、全員に感謝の念を伝えた。
「皆さん、ありがとうございました。
お陰で息子を無事に取り戻せました。
もし、私で役に立つ事があったら、いつでも声を掛けて下さい。
あっ。自己紹介が、まだでしたね。
わたしは、マミヤといいます。この子は、ポポといいます」
「ぼほです。助けてくれて
ありがと!」
小さい男の子は、満面の笑顔を、向けた後、照れくさくて、マミヤの後に隠れた。
「いえいえ、無事でよかったです。
何か困ったら、また、連絡してくださいね!」
リイナが片目をつむりながら、にこやかにほほ笑むと、場が和んだ。
この後、町への到着が遅くなることから、早々に別れの言葉を二人に話して立ち去った。二人の蛇人は、感謝の念を忘れまいと、影がなくなるまで、手を振り、見送った。




