第271話 間話 ヒビキ離脱 3日目
三人は、一緒の部屋に宿をとると、リイナは、二人の後ろで、パトリシアに連絡をとった。
女冒険者と一緒に進むことを伝えると、代わりに、ヒビキが出発して、ギルドから連絡していたといった話を聞いた。
どうやら、入れ違えの連絡になったとリイナは悔しがった。
「後ろにモモちゃんがいて、びっくりしたわ」
「モモが、いたの、なんで、そんなところに」
「ハンさんがギルドマスターしてるから、
手伝うってことみたいよ」
「へぇ~、あの娘がね」
「あなたたちとは、ライバルみたいだものね」
「そうね」
王佐 十兵衛と半 信武は、以前は同一のパーティで冒険をしており、魔王討伐を機にパーティは解散。
十兵衛は、商人へ、信武は、パーティで一緒だったシスターと暮らし始めた。
十兵衛は、魔王からスライム改変のユニークをもらい、いろいろなアイテムを作成しては、売っていき、商売は順調にいっていた。
だが、一緒に商売を始めた魔法使いが、別の男のもとに走っていき、一人になり、寂しくなって大陸を渡る決意をした。
その大陸では、男は陸に上がれず、途方にくれているとことと、美人が赤ん坊を連れて、歩いていた。その時に一目ぼれした相手がが、パトリシアだった。
赤子連れの彼女も傷心であり、商売を手伝ってもらいながら、お互いが人肌を求めたことで、少しづつ打ち解け、自然に女の子、のちのアンナを身ごもった。
同じころ、シスターも身ごもり、モモが生まれ、三人は、競い合うように、成長していった。モモとアンナが10歳になるころ、アンナは、騎士の教育をする専門の学校へ、モモは、信武の手伝いする道を選んだ。
「あとで、モモちゃんに、お願いしといたわ」
パトリシアは、モモとの別れ際にヒビキが狙われることを心配したが、娘の心配を増やしてもと思い最後までは語らなかった。
「明日からは、ヒビキちゃんの通信の相手はジュウベエがするわ。
今日、パパは戻ってきたのよ」
「そうなの、よかったわね」
この後も、リイナはヒビキのことを細かく夜遅くまで聞くと、二人の女性はつまらなさそうに先に眠った。
聞けることもなくなると、リイナも安心し、ベッドの中で丸くなった。
ようやく、心にゆとりもできたのか、久しぶりに、深い眠りにはいっていった。
朝早く、赤毛の由香里に起こされると、一緒に近くの酒場で、食事をとり、魔馬車に向かった。
3人は、既に行列ができている最後尾に並んだが、昨日リイナが並んでいた時よりも前のほうだったので、乗れることを確信していた。
「乗れそうね」
「そうね、お金は、リィちゃん、よろしく」
「ハイハイ」
これまでも、金遣いの荒い二人のため、お金管理はリイナが行っており、共有資産として、預かっていた。
リイナは、三人分のお金を払うと、最後列に陣取った。由香里と奈々(ナナ)は、次の町でこそ、いい男をゲットすると息巻いていたが、リイナにしてみれば、いつもの戯言なので、無視してヒビキのことを考えながら、眠りに入った。
昨日と同じように途中の村のトルツミで昼食を三人でとり、昨日と比べて会話のある食事を楽しんだ。
無事に旅は、進み本日の目的の町、工業都市 セユクーゲが見えてきた。リイナが窓から顔を出して前をみると、道がらに泣いているラミアをみかけ、町に入る前に馬車を止めた。
「止めて!止めて、降ろして下さい!!」
「またなの、リィちゃん」
「まぁまぁ、そこがリィちゃんのいいところなんだから」
やれやれといった、巨乳の赤毛美女を、黒髪のスレンダーな整った顔立ちの美女がなだめた。これも、3年の月日の中でおなじみの光景なためか、やれやれといった素振りを見せたが、二人揃って、嫌だとは思っていなかった。
「で、今度は、何をみつけたの?」
「あそこのラミアが、困ってたの」
「さぁ。行こうか、ナナにリィちゃん」
リイナを先頭に、二人の女性が飛び降りると、魔馬車は、何事もなかったかのように出発していった。
リイナが、座って泣いているラミアに声をかけると、ラミアはくしゃくしゃの顔を、リイナに向けた。
「どうしましたか?」
「うぅ、息子が……」
「息子がどうしたの?」
「ゴ、ゴブリンに……」
しとしと泣きながら、話を聞いていくと、ゴブリンの軍団に、息子を人質にとられ、連れ去られたようだった。
「どっちのほうにいったの?」
「あ、っちに、そ、れに……」
どうやら、更に詳しく話を聞くと、リイナよりも前に一人で向かった冒険者がいたようだった。
「大丈夫かしらね」
「まぁ、行ってみるしかないわね」
奈々(ナナ)と由香里が話してる前のほうで、ラミアとリイナが先陣を切って前を進んでいた。 半時ほど進むと、ゴブリンと思われる足跡がたくさん発見できた。




