第268話 彼女に贈り物をしてみよう
「あんたも、大変だったのね」
「モモも言われると、なんか変な気分ね」
「どういう、付き合いなの?」
これまでの親同士の関係性を聞くと、驚くことばっかりだった。
「へへへ、いいでしょ。
ヒビキにもらったんだよ」
モモがにやにやしながら、リイナに見せつけると、彼女は、目で直ぐに判るくらいに悔しがった。
「ぐぬぬ!
もっと、いいものを買ってもらうわ!」
「モモもやめなよ、
それに……」
「で、ヒビキにキスまでしちゃったんだよ」
「ど、どういうこと!
ヒビキ」
リイナが、悔し顔から涙目になると、モモがさらに追い打ちをかけた。
「ぶちゅっと。
すっごく、うれしそうだったわ!
ふふ、ふん」
どや顔で、リイナを見ると、鼻で笑い、最後は高らかにわらい始めた。
バンッ!
「ヒ、ヒビキのバカ!!」
リイナが、両手でテーブルをたたくと、酒場から涙を流しながらでていった。
「リ、リイナ!
モモ、やりすぎだよ」
「ひひひひひ」
僕は、出ていったリイナを追いかけて店を出たが、町は、混乱が収まり人で埋まっていて、
直ぐに見失った。
くっ、リイナは、どこに行ったんだ。
僕は、町の中をありとあらゆる道を走って探したが、一刻探しても、一向に見つからなかった。
そしてこれまでのことを思い出しながら、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていった。
ごめん、リイナの気持ちを考えないで……
走り回っていると、高台が目に入った。
あそこなら、上から探せるかもしれない。
僕は、半時ほどかけて高台を走って上ると、そろそろ日が落ちるくらいで、夕焼けになりそうだった。
これ以上、暗くなったら、探せなくなる。
僕は、必死で町の全体を探すと、港の入り江近くに、一人の女性の姿が見えた。
見つけた、あの服装は、リイナだ!!!
僕は、全力で、高台を転がるぐらいに向かうと下り坂であったことから、先ほどの半分もかからず降りることができた。僕の焦る気持ちとは裏腹に混んでる道では、前にすすんでいかなったが、それでも、半時ほどたつと、ようやく、リイナの背中が見えてきた。すでに、日は沈みかけ、彼女の横顔には、夕焼けに照らされていた。
僕は、最後までリイナの後ろまで、近づくと声をかけた。
「リイナ。
リイナ、ごめん」
「ひどいよ、ヒビキ
よりにもよって、モモにプレゼントするなんて」
すでに、泣き止んでは、いたが、目の下には涙の道が残っていた。
「リイナに着けてもらいたくて、買ったんだ」
僕は、バックから赤い貝殻のイヤリングを取り出すと、リイナに見せた」
「わ、わたしに?」
「そうだよ、最初に、これが似合うと思って、買ったんだよ」
「そうなの?」
僕は、涙の後を親指で拭くと、両方の耳に、イヤリングをつけてあげた。
「ど、どう似合う?」
彼女は、笑顔に戻り、その場でくるりと一回転して見せた。夕日の中にはっきりと表現された赤い貝殻が彼女の美しさを一層輝かせた。
「うん、綺麗だよ」
僕は、恥ずかしげもなくそのままの言葉を心から述べると、彼女は照れて美しさに可愛らしさが増した。
彼女は、起こり顔に戻ると、
「あ、キスは、どういうこと!」
「別れ際に、ほっぺたにされただけだよ」
「でも、キスはキスよ、
わたしだってまだなのに……」
彼女は、目を瞑り顎を上げ、唇を前に出した。
僕は、頭を描くと、夕焼けで美しく彩られた彼女に近づき……
海辺に二人のシルエットが重なると、まるで映画のワンシーンのような風景が見え、誰もがうらやむ光景に見惚れていった。それは、夕日が沈み、満点の星空の下になると、より一層の幻想的なシーンに変わっていった。
この後は、リイナの旅編が続きます。その後、三部の予定です




