第263話 アンナの技を魅入ってみよう
ハヤテは、頂上に降りてきた大剣を斜めにうけ、床に落とさせると、けさぎりで姫様の胴体に向かって、振り下ろされた。
姫様驚愕の表情を浮かべたが、体を落とし床につくぐらい低くしながら、一歩を踏み込み、左手の大剣で足を水平に薙ぎ払った。だが、ハヤテは、前に軽くジャンプをすると、顔をめがけて蹴りを入れた。姫様は、最初に放った大剣を持ち上げ、剣の腹でギリギリ受けると、数メートルにわたって、剣ごとふったばされ、距離が開いた。
辺りは、僕だけでなく、すべて人々が魅入り、二人のやりとりを唖然になって見守っていた。
「片手は覚悟してもらおう。
火炎ムチ!」
そんな中、ペテさんの杖から、放たれた炎型のひもは、空中で制御が効かなかったハヤテに向かって、ジグジグに向かっていった。
「ハヤテ様!」
危険な状況を察し、禿げ頭の男が絶叫した。
ハヤテは、姫と同じように大剣の腹で受けようとしたが、炎は、大剣にまとわりつき、ハヤテの右腕を何重にも重なり、燃え始めた。
「んんっ、ちょっと熱いくらいか」
右腕の服は、燃え尽き、黒焦げになって空中に霧散したが、その下の皮膚には、やけど傷はなく、細い腕だげが見えた。
「バカなぁ」
「あれは、モーリス様のユニークスキルの剛体じゃ」
「あれですと、我々の攻撃は、傷一つ、つけられないでござる」
「とりあえず、あれは、姫様にお任せし、
僕たちは、周りのごろつきを、なんとかしましょう」
「了解です!」
僕たちは、姫様の邪魔にならないように傍から離れ、ペテさんを中央に、四隅で対陣をくんだ。
「お前たち、やってしまえ!」
禿げ頭のゴーラリオが指示をすると、30人以上の男たちが、僕たちを囲み始めた。
全方位からの攻撃で、こちらは、防戦一方だった。
さすがに、オオストラトさんは、相手より一枚も2枚もうえで、3人の相手の攻撃を軽くいなし、様子を見ながら、一撃をいれようとするが、エドワードに攻撃の一手入り相違なると、ファローをしながらとなり、なかなか有効だが打てなかった。
エドワードは、足をひっぱいて、1対1なら、簡単にねじふせれたろうが、移動ができない、固定位置での戦闘、多隊1では、彼らしさをだせないようだ。
僕は、初めての多隊戦で、攻撃までの余裕をみいだせなかった。
ペテさんは、相手の魔法使いと対峙するかたちとなり、相打ちが続いていた。
だが、一人全体を魅了するアンナは、輝いていた。
相手の先の先で、一撃をいれ、致命傷まではいかないが、確実に相手を傷付つけていた。
「ふふふ、ヒビキ兄さんみていてください」
彼女だけは、楽しそうに小さい場所を舞っていた。男たちは、上下左右に揺れる胸に、にやけがとまらず、攻撃に精悍さを欠いていた。
僕も、僕の前のふたりも、チラ見せざるを得なかった。
「無茶は、だめだよ、アンナ」
彼女は、僕に笑みを浮かべると、突っ込んできた二人に技をくりだした。
「リーディングスワロー!」
彼女は、一気に間合いをつめると、前に構えていた剣の下に滑りながら、すすみ、彼らの間を通り過ぎる際に、下から、両肩を4突した。
あっという間に、彼らの後方にいくと、倒れた彼らの後ろで立ち、また前の位置に戻った。
「かっこいいね!」
「ふふふ」
移動する際のバク揺れは、すべてを止めて、見る価値があった。
「すごかっただろ!」
「あぁ、すごかったな」
僕は、対峙している男たちと意見を共有し、目的はかわり、同じ目になった。




