第26話 村に向けて出発してみよう
「アンリさん、何してるんですか?」
「うふふ、お弁当よ。
もう出発するでしょ。
お昼は一緒に食べれないと思うから、
こっそり、戻ってきて作ってたの」
「そんな、悪いですよ」
「いいのよ、その代り、私を思い出しながら、
食べなさいね」
そういって、口歌をしながら、料理を作っていた。
「掃除は、終わったんでしょ、
こちらも、もうすぐ作り終わるから、
出発の準備でも、しなさいね」
「わかりました」
僕は、言われるがまま寝室に向かった。
〈リイナ、何か準備するものある〉
〈カバンの中に、杖と本があるし、
帽子を被って、マントを羽織なさい〉
〈本って必要?〉
〈あった方がかっこいいでしょ?〉
使わないし、邪魔なだけな気がする
論じても仕方ないし、言われた通りにしよう。
最後にバックをもって、ベッドメイキングもしてっと。
準備もできたし、
ベッドは、綺麗に片づけたし、
忘れ物もないな、うん。
〈さて、アンリさんに挨拶して、村にいってみようか〉
〈そうね、わたしの分まで、お礼いっといてね〉
〈うん、わかった〉
そういって、僕は、寝室の扉をあけた。
アンリさんは、テーブルの前にたって、
僕らを出迎えていた。
「出発の準備できた?」
「はい、大丈夫です。
本当にお世話になりました。
おかげさまで、体調も整い、出発できます。
ぼくとリイナともども、ありがとうございました。」
僕は、深々と頭をさげた。
「いいのよ、無事に体を見つけてね。
見つけたら、また、よってらっしゃい。
途中でもいいから、また、来てね」
そういって、アンリさんは、手をふった。
「はい、またきます。その時は、
よろしくお願いします」
僕は、そういって、手をふりながら、村の方に振り返った。
「何か、村で困ったことがあったら、
幼馴染のシャルルに相談するのよ。
教会にいると思うから。」
離れ際に、アンリさんが涙目でそう言った。
「わかりましたら、
困ったら、探してみます」
僕は、ゆっくりと道を歩き始めた。
「カミュもお別れしなさい」
「わん、わん」
振り返ると、そこにカミュがおり、
例のごとく頭には、カエルが乗っていた。
「カミュもまたね」
僕は、そういって、再度歩き始めた。
あいつは、あそこに残るのかな。
また、どこかで会いそうだなと
思っていると、
ドスンと音がし、
首筋に、何か重い物が乗った気がした。
〈ぎゃ~、わたしのフードが~〉
上空で、リイナが叫んでいたが、
僕には、何が起きたか直ぐに判断ができた。
カミュが、カエルを僕に向かって投げて、
ローブのフードにカエルが入ったんだろう。
うしろで、げこって声がきこえてくる。
遠くの方でアンリさんが、
「可哀想に。あの子も、嫌悪もちだろうから、
村できっと苦労するわね」
と呟いていたのだが、
リイナの叫び声で僕の耳には入ってこなかった。




