第258話 旅の目的を聞いてみよう
ホテルの従業員にも笑われながら、見送られ、
町の中に入ると、同じように笑われた。
当然、ダンジョンに行っても笑われまくったが、
それ以外にも、アンナへの視線や、姫様への恐怖の視線も感じた。
僕が、魔法陣の列に並ぶと、徐々に列は割れていき、
先頭に行くことができた。
「なんか、みんな譲って、くれる、なの」
姫は、らんらん、いや、大剣二本をカンカン鳴らしながら歩いてた。
昨日のミノタウルスの影響か、それとも、大剣を二本軽くもってるからか、
それとも、材質をみてか、どれもあり得そうで、判断はつかなかった。
「じゃ、先にいきましょう!」
一刻も早くここから去りたい僕は、速足で魔法陣にはいった。
「さぁ、みんな掴んでください。
昨日のスラッドスライムの後の部屋にいきます」
みんなが、体に掴まったのを確認すると、魔法を唱えた。
「帰還!」
僕らは、光り輝くと同時に、視界がゆがんでいき、
ゆがみが終わったときには、話していた通りの魔法陣がある部屋に戻った。
「さすが、なの」
「すばらしいじゃな」
「今日もよろしくでござる」
彼らは、素直な感想を述べているようだ。
少しうれしい。
「これからは、初めての場所ですね。
みなさん、気を引き締めていきましょう」
「そうですね。
それがいいね、ヒビキ兄さん」
ゆっくりと下の階に向かうと、いつものように、
戦慄ショーが始まった。
この階からは、魔法を唱えてくるコボルトやゴブリンなどが、
現れたが、姫様は、魔法をよけ、一撃の下、倒していった。
どうやら、エレメール姫様は、普通でも戦えるようだ。
今の振り回しで歩く方が楽だから、やっていたことが理解できた。
この先のことを考えると、今後は、体勢を変えながら、
フォローしていくような戦闘も、考慮に入れる必要があるかも
しれない。
「ところで、このダンジョンは、何階まであるんですか?」
「ここは、30階じゃな。
この大陸の2つのダンジョンもそうじゃった」
「もしかして、他もダンジョンに潜ったんですか?」
「そうでござる」
「この旅の目的を話してなかったんではないですか」
「確かに、そうじゃな。
そうだのう。
これは、姫様が、魔王候補になるための冒険じゃ」
ペテさんが、話をきりだすということは、信頼をえられたのか、
話していいことなのか、どちらかはだろうと推測できた。
「それは、どういうことです」
「ダンジョンの最奥にいる魔物を一人で戦い倒すことが、
魔王候補の最低条件なのです」
「それは、それとして……
姫様は、魔王の候補になるんですか?
なりたいんですか?」
「それは、そう、なの」
ドワーフたちは、顔を合わせると、大爆笑した。
僕は、何が起きたか、さっぱりわからなかった。
「な、なんで?」
「姫様は、魔王様の一人娘で、
いずれ魔王になるのは、生まれた時から決まってるでござる」
「えーー、本当に姫様だったんですね。
しかも、魔王の!」
「ヒビキさんは、姫様を何だと思ってたんです。
そうじゃなきゃ、別大陸から、私達を呼べるわけないでしょ」
アドアが、話に割り込んできた。
「なんで、来たなんかは、わかんないよ」
「もっと賢くならないと、ヒビキ兄さんは」
これ以上は、一方的にやられそうなところで、
次のフロアに下りる階段が見えたきた。




