第253話 彼女と話してみよう
時折抱き上げているエルフから、視線を感じていたが、
確認すると、目を瞑っており、肉まんの主張に目をとられ気が散った。
周りの羨望の眼差しや中傷に耐えながら、進むと、
横には、ギルドが見えた。
こんなに遅いとギルドが閉まってるから、通信は難しいだろうなぁ……
考えごとをしながら、しばらく歩くと、ようやく、ホテルが見えてきた。
昨日に比べると、精神的には、疲れていないが、肉体的には、疲れてる、
不思議な感じだった。
ホテルの人に挨拶し、二人を連れて、部屋に戻ると、
姫様がドアを開けて、先にはいり、話しかけてきた。
「私のベッドを、使って、いい、なの」
「ありがとうございます」
姫様の提案に乗っかって、キングサイズのベッドに並べて寝かせた。
まだ、意識は戻っておらず、彼女らは、可愛らしい寝息をたてて、横たわっていた。
僕は、エルフのそばのイスに座り、やることが無くなったドワーフに提案した。、
「夜も遅いですので、皆さんは、ご飯に行ってきてください。
彼女たちが、目を覚ましたら、向かいますので、
お気兼ねなく」
「わかりましたのじゃ。
じゃ、皆の衆、いきますのじゃ」
誰一人として、残るといわなかったのに、内心イラっとしたが、
この後のことを考えると、一人でいることのほうがよかった。
扉の閉まる音が聞こえると、僕は、話しかけた。
「アンさん、起きてるんでしょ?
もう、目を開けてもいいですよ」
彼女は、片目で薄目をあけて、確認したかったようだが、僕に、見られてるのがばれると、舌をだして、おどけた。
整った顔立ちに、崩した表情が、美しさより、可愛らしが増していた。
「ふふっ、ばれちゃった」
初めて聞く彼女の声は、以前会話したエルフとどことなしか、似ている気がしたが、思い出せなかった。
「隠す必要なかったのに」
「だって、抱っこされたことなかったから!
……
どきどきして、終わるのがもったいないあなぁ~って。
目を覚ましたら、歩かされるでしょ?」
「そりゃ、そうなるけど」
「あの姿で歩かせようだなんて、変態さんだぁ」
、笑いながら会話をし、彼女は、片目をつむり、僕に向かって人差し指を上にあげた。
彼女の様子をみると。意識をなくした後遺症はなさそうだ。
「服を着ればいいでしょ」
「あの場で、着替えさせるなんて、変態さんだぁ」
「上だけ羽織ればいいでしょ。」
「上だけ着させて、下着だけで歩かせるなんて、
……変態さんだぁ!!」
どうやら、僕をいじって楽しみたいだけのような気がしてきた。
「うぅ。」
彼女とのやりとりで、アンドレアさんが、目を覚ましたようだ。
「ここは?」
「ここは、ホテルで、姫さまのベッドだよ。」
彼女の様子を見に、近づくと、彼女と視線が合うと、
苦悶の表情を浮かべるクサイ演技をしながら、ベッドに倒れ。
「あぁぁ~」
彼女は、穏やかな表情に変わり、仰向けで、ヘソの上で手を組むと、唇を尖らせ、
唇を少し開き、小声で話し始めた。
「さぁ、王子様の口づけで、眠りを解いてください」
僕は、呆れながら、頭を掻いた。
「さっき、普通に起きたでしょ!」
「そうだよ、アドアちゃん。また、げんこつを食らいたいの?」
「そ、それはいや!絶対イヤ!!」
上半身を起こし、頭に手を当ててるところから、痛かったのを、思い出したようだ。
彼女は、アンさんから、僕の方に視線を向けると、
「そういえば、ヒビキさんが、運んでくれたんですか?」
「いや、エドワードさんに、頼んだよ」
「へへへ、私は、ヒビキ兄さんに、お姫様抱っこで、ここまで運んでもらったんだよ。
うらやましいでしょ」
「いいなぁ、私もお姫様だっこされたい。
あんちゃんだけずるい」
ぐぅ〜。
僕は、アドアをお姫様だっこすると、
「みんなが、酒場で、待ってるから、行こうか?
アンさんは、服を着替えた、方がいいね
先行ってるよ」
「やったー」
彼女は、右手を僕の首に回すと、より、顔が僕に近づいた。
「ま。まってよ〜
すぐに、着るから!!」
僕は、器用にドアを開けて、彼女の返事を待たずに、部屋の外まで、
移動した。
後ろから、走ってくる音が聞こえると、停まって待ち、ホテルを仲よく出て、
昨日行った酒場に向かったのだった。




