第251話 状況は把握してみよう
天井にいた黄色い巨大なスライムは、天井から離れ、二人に覆い被さろうとしてた。
二人が飲み込まれるのは時間の問題で、考えている場合ではなかった。
僕は、覚悟を決めると、人生で三度目の技を繰り出した。
「スズネ突撃壱!」
両手の武器を放し、右足の一歩で右手を使って、シスターを右壁にはじき飛ばした。
既に騎士は、、左半身が飲まれれおり、余裕は一つもなかった。
左側にいた騎士に近づくため、大きく左足をだして方向を修正し、左半身が飲まれていた騎士の一番近いお腹を
思いっきり、突き飛ばした。
騎士は、衝撃の強さから、ずぽっという音と共に、、左半身が抜け、お腹を軸に、ごろごろと転がっていった。
左の壁にガシャンと強烈な音がフロア内に響いた。その後、ピクリとも動いていなかった。
逆に、僕の左腕は、黄色いスライムに、二の腕まで、しっかりと埋まっていた。
装備していた皮腕防具や服などが泡のようにぶくぶくと音を立てると直に溶けていき、
僕の腕も骨を含めて溶け切るのは、時間の問題のように思えた。
僕は、辺り見回し、戸惑っていたみんなに指示を出した。
「エドワード、シスターの様子を、見てください」
「わかったでござる。
「オオストラスさん、僕の右手を掴んで引き抜いてください」
「了解じゃ」
「ペテさんは、魔法の準備を。
僕の合図で、放ってください!」
「うむ、お任せを」
「姫様は、騎士の様子を見に行ってください」
「はい、なの!」
各々が、僕の指示のもと、各地に走って散らばって行った。
直ぐにオオストラスさんがきて、僕の右手を、掴みむと、
スライムから、抜け出してくれた。
「ヒビキ殿ダイジョブぶか?」
「ええ。見た限り大丈夫そうです。」
僕は、抜けた左腕を見せると、傷一つなかった。
「姫様の手伝いをお願いします!」
「うむ」
「ペテさん、いまです」
「任されよ!
火炎渦!」
ペテさんの杖から渦を巻くように、巨大なスライムに向かって、炎が向かっていった。
巨大なスライムに辿り着くころには、小さな渦が巨大となっており、
スライム全体を飲み込んでいった。
だが、ジュッの音がしたくらいで、ダメージを受けているようには、見えなかった。
僕は、ペテさんに近づくと、
「ペテさん、引き続き、お願いします。
周りの様子を見たら、戻って手伝います。
その間、お願いします」
「なんとかしましょう。
くらえ!火炎連掌!!」
杖からは、大きな掌型の炎が巨大なスライムに、何発も飛んでいったが、
表面を揺らすだけで、意味があったのか、わからなかった。
足止めとよべるのかもしれないの……かな。
僕は、炎だけは意味がないなと認識すると、
介護している、エドワードの元に走った。
「どうですか?」
「打ち所が悪く、気絶したようでござる。
それ以外は、外傷はなさそうでござる。
しばらくしたら、目を覚ますと思うでござるよ」
「そうですか、とりあえずよかった」
「目を覚まさせることもできるが、
どうするでござる?」
「今は、様子見をしましょう。
状況が悪化したら、お願いするかもしれません。
スライムの動きを見ながら、抱えて、後ろに下がってください」
「判ったで、ござる」
今度は、騎士の方にいるであろう、オオストラスさんの方をみると、
騎士を裏返しそうとしているところだった。
真ん中にいるペテさんを通り越して、オオストラスさんの方に向かった。
ペテさんが、目をつむり、大きな身振りをしていると思ったら、動きをとめ、目を開けた。
「これで、最後だ!
火柱円塔殺!!」
天井にまで届きそうな巨大な火柱が、スライムの周りに八本立つと、
真ん中のスライムに倒れ、スライムは火炎に包まれていた。
とりあえず、最後でないのは、火炎が消し終わらなくてもわかるので、
いそいで、オオストラスさんのところに走った。
「オオストラスさん、どうですか?」
「どうやら、意識を失くししているようじゃ。
それよりも、アシッドスライムの酸毒で、鎧とけきり、
内部まで、入りそうじゃ。
急いで、外す必要があるのじゃ」
「どうすれば、いいですか?」
「この手の鎧のタイプは、裏に外れるポイントがあるのじゃ」
オオストラスさんが、騎士をごろっと、仰向けにすると、
左半身の酸に浸かっていたところは、ドロリと溶けており、煙が出ていた。
「ここじゃ!」
首と背中と下半身の留め具を指さすと、首の留め具を外した。
僕も、下半身の留め具を外すと、同じタイミングで、背中の留め具を
外したところだった。
バガン!
音と共に背中のプレート部分が、観音開きに開いた。
その中には、美しい白い背中が見えた。
だが、驚いている場合ではなかった。
もう、フルプレートは、限界にきており、いまにも、内部に侵入するところだった。
僕は、細い腰に手を回し、一気に引き抜くと、同じタイミングで、
鎧の半身は、液体に変わった。
「あ・が・ご・か・が・お……」
中央で、ペタさんの限界の声が聞こえてきた。
「オオストラスさん、ペテさんをこちらまで、連れてきてください」
「了解じゃ」
「姫様は、ここで、彼女を見守っててください」
「わかった、なの。
ヒビキは、どうする、なの?」
「僕は、あのスライムを倒してきます!
視ててください!!!」
「がんばって、なの!」
僕は、美少女に笑顔を見せると、振り返り、強大なスライムに向かって
歩き始めた。




