第250話 ボス部屋に入ってみよう
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十一階は、九階と似たような雰囲気だった。
確かに、モンスターの種類は、増えているようだが、
今回も、意識する必要すら感じなかった。
冒険者も時折見かけ、下の階から察するに、あぶれたか、
余裕のあるパーティが下か上で戦っているんだろうと推測できた。
この後も、一階ごとに、半時ほど時間をかかったが、
十二、十三、十四階と苦労なく進んだ。
冒険者も人が徐々に減っていき、十四階では、二組ほどしか見なかった。
僕らも、朝からダンジョン移動で、疲れが顔にでて、どんどん会話が無くなっていった。
十五階を降りると、今までと同じように、魔法を使ったが、
完全に慣れてしまったので、特に何の反応もなかった。
「領域探索!」
開いた本には、十五階のダンジョンの様子が書き込まれると、
階段の位置を調べる必要がなかった。
「ここですね」
「そうじゃ。
ヒビキ殿を呼んだのも、このフロアのためじゃ」
指をさした手前には、大きな部屋があり、十階と同じような作りになっていた。
「と、いいますと?
姫様でも、勝てないような敵がいるんですか?
想像し難いですね」
「そう、なの
近づけない、なの」
「アシッドスライムがいるでござる」
「それも、ジャイアント級です」
「剣とか鎧とか、なんでも、溶かすんです」
「でじゃが、魔法に弱いはずなんじゃが、
毎度、ペテの魔法だけだと、
攻撃手段がなくなるのじゃ」
「ヒビキに期待してる、なの!」
「はい、がんばります!」
ようやく、出番が来て、しかも、頼られている状況だと、
僕の心は、踊り始めた。
気をよくしながら、道中を進み、向かってくる敵は姫様が殲滅し、大きな部屋が近づくにつれ、
どんどん緊張してきた。
そんな僕の気持ちとはうらはら、無事に進んで行くと、
とうとう大きな扉の前にやってきた。
いつものように、姫様が先頭を進み、ドワーフ三人の後に、
僕、その後、シスターと騎士の順番で入る予定だ。
「では、いきますぞ」
「行く、なの」
「はい、がんばります!」
僕は、同じ言葉しか、思いつかなかった。
扉を開けると薄暗くて奥まで見えず、いるはずのスライムの姿をとらえることができなかった。
「おかしいですな。いつもは、正面にいるのじゃが……」
「まぁ、いいなの。
先に、行く、なの」
彼らは気にせずいつものようにずんずんと進んでいき、
最後の騎士が中に入ると、後ろから扉が閉まる音が聞こえた。
バタン!
彼らは、いつものことのようで、振り向かなかったが、
緊張していた僕は、何事かと扉の方を振り向いた。
かわいいシスターの後ろの天井に、
巨大なスライムが張り付いていた。
今、まさに、巨大なスライムは、騎士とシスターを飲み込まんとしていた。




