第243話 ダンジョンに出発してみよう
エドワードさんに待ってもらい、
早々に着替えると、二人で泊まっている部屋に戻った。
部屋のドアを開けると仁王立ちで、いら立っているツインテールがいた。
一人で最後に戻っていたらと思うと、身震いが止まらなかった。
「お待たせしてすみません」
「待った、なの。わ・た・し・を……」
「姫様、行きましょう」
オオストラトさんが、姫様の両肩を押して、ドアに向けていった。
僕の横を通りすぎるとき、彼はウインクしていった。
「まだ、いいたいことがある、なの」
「ダンジョンが姫様を呼んでおりますぞ!!」
「そうなの。今日も、片っ端から木っ端微塵にしてやる、なの!!!」
楽し気に叫ぶと、元気よく自分で歩き始めた。
二人の後に、ペテとエドワードさんが、その後には、
可愛らしい微笑みをしながら一礼をしたアンドレアさん、
更にすぐ後に、彼女と仲良く手を繋いで、ひっぱられるガシャンガシャンさんが、
僕は、最後尾で付いて行った。
先頭グループのオオストラトさんがホテルの人に挨拶し、山のほうに向かって進んで行くと、
徐々に冒険者が多くなり、行列ができていた。
いつも通りなら、魔法陣の行列だな。
だが先頭グループは、お構いなしに、その横を通り過ぎていった。
オオストラトさんに近づくと、
「魔法陣は、使わないんですか?」
「あれは、なんなのじゃ。
まぁ、わしらは、入り口からはいって、出てくるだけじゃ」
「ヒビキは、大人しく私の後を付いてくればいい、なの」
隊列は姫様を先頭に、誰も進んでいかないダンジョンの入り口に向かっていった。
ダンジョンの入り口が近づくと、姫様は、バックから剣をとりだした。
それは、剣というにはあまりにも大きすぎた 大きく 分厚く 重そうで、それでいて、剣の刃は
これまでに見た、どんな剣よりも鋭かった。ドス黒いようで光り輝くその刀身は、
彼女の3倍、いや、4倍は、ありそうだが、彼女は楽々と肩に担ぐと、もう一本取り出して、クロスして持ち上げていた。
時折、地面にぶつかると、カンカンカンカンと地面をならし、あたかも、わたしがきたぞと、畏怖しているようだった。
僕は、本当に切れるのか、剣の刃に触ろうと手を伸ばすと。
「やめるで、ござる!!!!手がすっぱっとなくなるでござるよ!!!!!
ちょっと、見ているでござる!」
彼は、地面からこぶし大の固そうな石を持ち上げると、ふわっと、剣刃に投げつけた。
カンっていう跳ね返りを想像していたが、岩は、なんの抵抗もなく、スパッと二つに切れ放物線を描いた。彼は、切れた石を拾って僕に見せると、断面がヤスリで削ったように、鏡面になっており、顔が映っているぐらいに綺麗だった。
「もう、あんなマネしちゃ駄目でござるよ」
彼は、子供に諭すように言って去って行ったが、僕は、そんなチャチなもんじゃなくて、もっと恐ろしいものの片鱗を 味わった気がした。




