第241話 至福の経験をしてみよう
どのくらい経ったかわからないが、意識は戻ったが、
痛さのあまり、ピクリとも、瞼すら開くことができなかった。
がらがら……
ドアが、開く音とともに、走ってくる音がした。
ドタドタドタ……
「ヒ、ヒビキさん、大丈夫ですか!」
必死で薄目をあけると、美少女が心配そうに、僕の顔を覗きこんできた。
息も絶え絶えな僕は、涙目で訴えるしかなかった。
「す。すぐ回復しますから、待っててください。
回復!」
僕の体をあたたかなや柔らかい粒子に囲まれると、
背中の痛みが取れていった。
す~は~、す~は~、
さっきまで、背中の痛みが強すぎて、深く息ができなかったんだよなぁ。
近くのイスに座って、呼吸を整えた。
「それにしても、何があったんですか、
肩から腰に掛けて、真っ青な太い傷がついてましたよ!」
「ちょっと、背中を流してもらう際に、じ、事故があっただけだよ」
「事故っていうレベルではないですけど・・・・
洗ってもらいたいなら、私が、背中をあらってあげましょうか?」
「い、いや、だ、大丈夫だよ」
僕が否定をしようと、後ろを向くと、何もつけていないマナイタと目が合った。
慌てて正面に顔を戻すと、背中に、ぬれた布の感触があった。
「昔は、こうやって、みんなで、背中を流したもんです。
最近は、アンちゃんが一緒にはいってくんないんです……
今朝だって……」
流石に年をとったら、お兄さんも一緒に入るのは遠慮するかもしれないよね。
どうやら、話しながらで背中を、洗い終わったようだ。
「それにしても、ヒビキさんの背中は、大きいですね」
ピタッ……
「ィ、ひやぁ~」
耳元で、囁くようにつぶやかれた。それよりも、背中にはマナイタと二つの点の感触があり、密着したことに驚いて、声を出してしまった。背中に意識が集中しているせいか、アンドレアの鼓動が聞こえた気がした。
「もっと、やった方がいいですか?」
「け、けっけっ、結構です」
僕は、思わず声が裏返ってしまった。
マナイタが離れて行くと、温かみがなくなり、背中にひんやりと風が吹くと、
寂しさを感じた。
「今度は、わたしの背中をあらってくださいね。
私もあらったんだから、いいですよね?」
後ろを振り向くと美少女シスターは、体を洗う準備をしていた。
こちらに振り向こうとするので、慌てて了解の返答をした。
「うん、わ、わかったよ。
だ、だから、振り向かないでいいよ」
「は~い」
彼女は、元気な声で返事をすると、こちらの意に関せず、右腕から、洗い始めた。
僕は、布にお湯をぬらすと、真っ白な小さな背中をやさしくこすり始めた。
「ぅふ ふ~ん、上手ですよ、ヒビキさん」
僕は、もう少し力をいれようと、左手で脇を掴むと、右手に力を込めた。
「ひやひゃひゃひゃ~。
ヒビキさん、脇は駄目です。脇はやめてください。イヒヒイッヒ」
「あぁ、ごめんなさい」
「うふふ、許してあげます」
彼女は、温泉からお湯を掬うと自分の体にかけた。
何回かお湯をかけたら、こちらに振り向き、
僕の腕を組んで、奥の庭に向かって、引っ張っていった。
腕から、彼女の体温を感じるとまた、心臓が高まるのがわかった。
一番奥深くに、仲よく浸かると、彼女は、寄っかかてきた。
彼女は、僕の肩を枕にして、外を眺めていた。
彼女は、窓の方を指さすと、
「ヒビキさん、見て下さい。外に白いかわいい子がいます」
「そうだね」
僕は、ちらりと彼女みると、かわいらしい顔がみえ、確かにその通りだと思った。
彼女は、僕の視線に気づいたのか、上目視線でにこりとほほ笑まれると、
壮大な鼻血をだして、ぶっ倒れた。
温泉につかり過ぎただけだよね、きっと。
既に視界は真っ暗になり、温泉に仰向けに、ぷかぷか浮かんでいるだけだった。
「ひ……び…………き…………ん………だ…………ぃ
…………あ………ん……………ん………た………す……………」
彼女の叫び声が遠くで、聞こえたが、頭と視界は、正常に働かなかった。
しばらく、すると、頭には、やわらかい感触があり、あまりの気持ちよさのため、そのまま、眠りについてしまった。




