第240話 エルフの横顔を眺めてみよう
朝、目が覚めると、部屋の中はまだ静かだった。
どうやら、まだみんなは眠りの中なんだろう。
昨日そのまま眠ったせいで、体中べとついた。
そういえば、立派なホテルといえば、お風呂だな。
きっとここにもあるに違いない。
僕はバックをもって、静かに部屋をでて、移動する部屋の前まできた。
入り口のホテルの部屋に尋ねてみた。
「大浴場はあるんですか?」
「はい、それは、自慢の大浴場がございます」
「どう行けばいいんでしょう?」
「その部屋にはいっていただき、
行きたい場所を念じれば、いけますよ」
「そうなんですか、わかりました。
姫様たちがきましたら、お風呂にいったといってください」
「わかりました。ごゆっくり」
僕は、ホテルの人に一礼すると、通信室にはいり、
大浴場を念じた。
部屋はゆっくりと動き出し、直に止まった。
下に引っ張られる感覚があったので、すぐ上の階だと思う。
大浴場のとびらを開き、中に入ると、100人はつかえるくらい広い
更衣室だった。
まだ、明け方ということもあり、ロッカーは一つも使われていないかと思ったが、
奥の上の棚に、一つバックがあった。
一人はいるのかもしれない。
僕も全部脱ぎ一枚布を持つと、大浴場にはいっていった。
湯けむりがモクモクとしているなか、みまわすと近場には、たくさんの洗い場があり、150人は入れそうな岩風呂があり奥にはガラス張りで、ベランダには山に続く道と、手入れされた庭が広がっていた。
最奥には、一人のひとかげがあり、湯けむりが薄いところから見ると、
白い肌に長い耳、頭には髪を結っているのか布がまかれていた。体系から女性のようにみえる。
洗い場で、からだをあらい、エルフに気づかれないように、静かに浴槽にはいった。
横から見える場所を探すと、洗い場に近いところから、見れそうだった。
横顔だけで美人と分かるが、ジーンにも、リイナのママにも似ていなかった。
意志の強そうな眉毛で、大き目が、あきらかに太りと異なったが、それはそれで、整った顔立ちをしていた。
それよりも、水面には、巨大な肉まんが浮かんでいて、二枚の桜が浮かんでは沈みを
繰り返していた。
彼女の視線の先には、一匹の白い獣がおり、たまに口角があがるのをみると、目の保養をしているようだ。
彼女は僕の視線に気づいたのか、こちらに振り向いた。彼女と目線があうと、僕は、目線を直に、庭の方にしたが、一礼をしたように見えた。
彼女は、たちあがりゆっくり、こちらに向かってきた。
まもなく僕の横に来そうなところで、浴室の扉の方から、にぎやかな男女の声が聞こえてきた。
彼女は、浴室の扉をみると、気づかれないように、浴槽の壁から回り込んで、
浴室の扉からでていった。
僕は、庭の方を向きながら目をつむり、世間の荒波のことを考え、
肉まんとピンクの関係性について真剣に悩み、眉間にしわを寄せた。
洗い場では、うるさい一団が、わいわいと体を洗っているようだ。
「姫様、背中をあらいますのじゃ、こちらに背中を向けてくだされ。
「お前のは、わしがあらってやろう。ありがたく思え」
「では、拙者は、ペレ様を」
「あたしも、洗いたいなの。
ひ~び~き~~~~!こっちにくる、なの!」
僕は、聞こえないようにすると催促が聞こえた。
「む・し・す・る・なの?」
「め、滅相もない。すみませんちょっと、考え事をしてまして。
姫様に背中を流してもらうなんて、できません」
僕は慌てて返答した。
「もしかして、こ・と・わ・る・なの?」
走って、イスをもって、お姫様の前に座った。
「それで、いいなの」
走っている最中、三人のドワーフは哀れんだ表情を浮かべていたのが、
かえって不安になった。
「じゃ、あらうなの」
背中に乗水にぬれた布の感触があったと思った直後、皮膚の皮がちぎれる感触が
背中に走った。
び び び いび び び び びっ!!
「ぎ、ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
あまりの痛みに、僕は、絶叫して、泡を吹いて倒れた。
「あたしより先にお風呂に入りなんて生意気なの」




